父方の祖父母の家はしつけに厳しい家でした。一緒に住んでいた叔母が教師という環境もあり、預かった幼子をきちんと育てようと気が張っていたのかもしれない。5歳の私も朝、雑巾がけもさせられたし、小学1年生の教科書をあてがわれて声に出して読むこともしていました。

 ばあさんには、それまで一緒に暮らしていたわけではないから遠慮がありました。ある日、漬物に一緒に漬け込むために柿の皮が窓の桟に干してあり、とてもおいしそうに見えた。ばあさんに「ちょうだい」と言っても「いいよ」とは言わないと思ったから、庭からそっと窓の下に忍び寄って手を伸ばしました。