登下校時などで危険を感じた児童らが助けを求められる「子ども110番の家」の県内の設置数が過去最少となった。協力店舗の廃業や日中に不在となる共働き世帯の増加、高齢化などが要因に挙げられている。県や県警には引き続き設置に向けた努力が求められる一方、防犯ボランティアや一般市民、企業が協力する「ながら見守り」などと合わせ、複合的な見守り態勢の構築を急ぐべきだ。
緊急時の駆け込み寺となる子ども110番の家は、主に自治会や学校、PTAが設置している。県内では1994年の小山市内での設置が始まりとされ、2005年12月に日光市(旧今市市)の小1女児が殺害された今市事件以降、防犯意識の高まりとともに増加した。統計が残る07年以降は09年の約6万軒をピークに減少に転じ、24年3月は4万1148軒でピーク時から3割減少。登録されていても実際は空き家というケースもあるとみられ、実態の把握も課題となっている。
今市事件を機に県内で急増した防犯ボランティア団体も見守りを担っている。自治会やPTA単位で組織されることが多く、地元警察署と連携しパトロールなどに取り組む。その一方で、高齢化などを背景に近年は減少傾向が続く。県警によると、23年の構成団体数は904団体でピーク時から約4割減っている。
こうした事情を踏まえ、県や県警が推奨するのが通勤や買い物、企業の事業活動など日常生活を送りながら地域の安全に目を配るのが「ながら見守り」である。
県くらし安全安心課によると、子どもだけで登下校する区間など「見守りの空白地帯」を埋めるのが狙い。独自に取り組む市町もあり、県では23年に事業化した。死角など犯罪が起こりやすい場所の見分け方や、110番通報の模擬練習などを行う出前講座を開催しており、11月末現在で19社のサポート企業、約900人の個人が受講した。「肩肘張らずに取り組んでほしい」という考えから活動はあくまで任意だが、広く啓発し受講者の増加に努めるべきだ。
声かけや付きまといなど事件となる可能性がある未成年者対象の「前兆事案」は、今年10月末現在で367件に上る。被害を未然に防ぐために、高齢化などの社会情勢を踏まえつつ地域の力を引き出す方策を見いだしたい。