栃木市が東北自動車道栃木インターチェンジ近くに造成を進める「栃木インター産業団地」に、NTTのグループ企業が国内最大級のデータセンター(DC)を整備する計画が明らかになった。進出が実現すれば、市は固定資産税などの大幅な増収が見込まれ、地域経済への波及効果も期待される。周辺街区も含めた産業団地の整備を市は着実に進め、計画通りに契約締結を完了させたい。
DCはインターネットのサーバーや通信機器などを集約し、運用することに特化した施設。デジタル化の進展で情報通信インフラの強化は急務になっており、国は大規模災害などに備えて中核拠点の整備のほか、地域を分散して十数カ所の地方拠点を設ける計画を示している。
関係者などによると、同社のグループ企業は産業団地内で取得する13ヘクタールに、生成AI(人工知能)にも対応したDC2棟を建設する。投資額は約2500億円で、1棟目は2028年度、2棟目は31年度に完成する見通し。同社はさらに市が産業団地近隣に整備する約26ヘクタールの「北地区」への進出も検討し、投資額は最大で約8千億円に上る見込みという。
市は国の「半導体・デジタル産業戦略」を踏まえ、栃木インター周辺地区の開発を、DCの誘致も視野に入れて推進する方針を決定。22年度には事業実施可能性調査の補助事業者に採択され、ネットワーク関係施設との距離、電力・通信システム供給に要する時間や費用、災害リスクの分析などを行ってきた。
産業団地周辺は首都圏にほど近く、交通アクセスの利便性もいい。近年の大規模な水害や地震でも被害に遭っておらず、災害リスクが低いのも特徴だ。計画通りであれば国内最大級のDC集積地になる見通しで、それに伴い、新たなサービスが広がる可能性もある。
一方、DCは機器の冷却などで膨大な電力を消費する。近年は生成AIの進化でデータ処理量が増え、国内の電力需要は右肩上がりで増えるとの予測もある。市も地域の電力供給態勢を見極め、安定的な電力確保に向けて再生可能エネルギーの活用も視野に入れて進めるべきだろう。
DCになじみの薄い市民も多い。締結後は進出の背景や効果について説明し、理解を深めてもらうことも重要だ。