2023年度に県内公立の小中高校、特別支援学校が認知したいじめの件数は前年度比約2割増の6183件と過去最多だった。このうち児童生徒の心身に深刻な被害が生じた疑いなどの「重大事態」も前年度比5件増の31件で最多となった。
教育現場は事態を深刻に受け止めるべきだ。いじめは明らかな人権侵害である。対応が遅れて事態が悪化することのないよう、早期に芽を摘むことが求められている。子どもを多角的に見守る体制の構築に取り組むとともに、重大事態の再発を防ぐ努力を怠ってはならない。
県教委によると、認知件数は小中高校と特別支援学校のすべてが前年度と比べ増加し、いじめの態様では約6割を「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が占めた。「仲間外れ、集団による無視」も1割強あった。
いじめ発見のきっかけは、アンケートが最多の2442件。本人からの訴え1435件、本人の保護者1076件と続いた。担任教諭の気付きも前年度比7割増の664件と増えており、積極的に認知しようとする意識の高まりもうかがえる。
教諭の働き方改革が進むとはいえ、業務量は依然として多く、子どもと向き合う時間が足りないケースもあるだろう。いじめの発見と発見後のサポートに向けたスクールカウンセラーの増員や、法律専門家などの協力を得て複数の目が行き届く体制をつくれないか。国、県の支援も欠かせない。
一方、いじめ防止対策推進法が定める重大事態は、生命、身体または財産に重大な被害が生じたり、長期欠席を余儀なくされたりした疑いのある場合に認定される。23年度の県内の重大事態は、小学校13件、中学校6件、高校12件だった。
防止法は重大事態が発生した場合、学校などが第三者委員会を設置して調査し、事実関係を明らかにすると定めている。再発防止や課題把握の観点から調査報告書を作成するが、公表の義務はない。
個人や学校の特定に結び付かない範囲内で、報告書の概要と要点を各学校で共有すれば、被害の重大化を未然に防ぐ取り組みの参考にもなるだろう。いじめ問題は子どもの命にも関わる。報告書を今後の対策に生かすべきだ。