県内各地の投票所が徐々に消えている。過去10年間、17市町で108カ所減少し、県内全体では約1割が閉鎖された。運営のための職員配置の負担や有権者が担う立会人確保が難しくなってきているのが要因だ。投票機会の確保のため移動を支援する市町もあるが、投票率低下の懸念は拭えない。インターネット投票を本格的に検討する時期に来ているのではないか。

 県選管によると、県内の投票所は2014年衆院選では900カ所設けられた。今月17日投開票の知事選では792カ所で、17市町の108カ所が閉鎖されている。

 17市町で減少数が最も多いのは栃木市の22。このほか那須烏山市は16、市貝町は8減っている。今回の知事選で設置された投票所は那須烏山市12、市貝町6カ所のため、この2市町は10年間で半分以下となった。急激な投票環境の変化と言わざるを得ない。

 7カ所減った日光市は車両を使った移動期日前投票所を導入するなど投票機会の確保を図っている。また73カ所を55カ所に再編した佐野市では、閉鎖した投票所から新たな投票所までワゴン車で移動支援を行っているが、利用者は少ないという。

 このため、インターネット利用がたびたび議論されるが、法改正や制度設計は遅々として進んでいない。

 まず、インターネット投票を実現させるには、在外投票での実施が鍵になるとされる。現在、世界各地に約9万7千人いる在外選挙人名簿登録者の投票は、大使館職員が投票用紙を厳重管理して日本まで運ぶ。毎回、大変な労力をかけることになり、総務省有識者懇談会が18年にネット投票導入を提言している。

 いまだ実現しないのは、国会の取り組みが後ろ向きだからと言わざるをえない。在外投票でのシステムが確立されれば、国内のネット投票にも応用可能とされ、実現可能性が大きく開ける。

 これまでに立憲民主党、国民民主党、日本維新の会は「インターネット投票推進法案」「ネット投票法案」などを衆院に提出している。

 衆院選で過半数を割った自公政権は、今後の国会運営に当たり野党の協力が不可欠となっている。法案を提出している野党は、ネット投票も重要なテーマとして政策協議し、実現の道筋をつけてもらいたい。