任期満了に伴う宇都宮市長選は無所属現職の佐藤栄一(さとうえいいち)氏が新人3人を大差で破り、市政初の6選を果たした。次世代型路面電車(LRT)をはじめとする5期20年の実績が評価され、多選批判、世代交代論を退けた。

 県都でも2028年に人口50万人を下回る見込みで、今後も少子高齢化の加速が推計される。佐藤氏は「次世代のためのまちづくりを」と少子高齢社会における基盤づくりを訴え続けた。持続可能な都市を次の世代に引き継げるよう、着実に備えを進めたい。

 選挙戦には佐藤氏のほか、いずれも無所属新人で元茨城県つくば市副市長の毛塚幹人(けづかみきと)氏、公益財団法人理事長の荒木大樹(あらきだいじゅ)氏、LRTに反対する市民団体代表の上田憲一(うえだけんいち)氏が立候補。08年以来、4人が乱立する激戦となった。

 市長選と同日程の県知事選でも現職が6選を目指したため、多選の行方に注目が集まった。ただ佐藤氏自身に多選を理由にした弊害などが目立たず、新人3人も厳しい批判を繰り広げなかったため、議論はさほど深まらなかった。佐藤氏は圧勝で信任を得たとはいえ、引き続き市民の声に丁寧に耳を傾け、市政運営に当たってほしい。

 もう一つ大きな論点となったのはLRTのJR宇都宮駅西側延伸を巡るまちづくりの在り方だ。荒木氏と上田氏は真っ向から延伸反対を主張したほか、推進に賛成の立場の毛塚氏も「恩恵は一部だけにとどまる」と指摘した。荒木氏と上田氏の得票を合わせると約1万5千票余りで、総得票数の約1割に当たる。

 昨年8月に開業したLRTの駅東側の利用は順調で経済効果も上がっている。しかし沿線から離れた郊外や周縁部ではLRTの恩恵を感じない層が一定数存在し、今回の選挙でも顕在化した格好だ。

 急速に進む人口減少社会において、LRTがなぜ必要なのか。LRTを核としたまちづくりの意義を改めて市民に理解してもらうことが重要だ。選挙戦で指摘された課題についても解決に向け知恵を絞ってほしい。

 6期目は佐藤市政の総仕上げとなるだろう。公約でLRT西側延伸の運行開始時期を30年に前倒すという思い切った決断を下した。少子高齢社会において生じるさまざまな課題に対し、今後もスピード感と実行力で持続可能な都市づくりに努めてほしい。