17日投開票の県知事選は、福田富一(ふくだとみかず)氏が全国の現職知事で最多となる6選を果たした。現在の5期20年は既に県政史上最長で、さらに4年間のかじ取りを託された。20年間の成果と課題を改めて洗い出し、まずは思い描く将来の本県像を県民に具体的に示すべきだ。その上で、未来に向けて必要な手当と投資をきめ細かく実行し、後世に「レガシー(遺産)」と評価される施策を残してほしい。

 これまで例のない6選をかけた選挙戦は、「多選」の是非が大きな争点のはずだった。多選批判に対し福田氏は「多選は否定しようがない。県民の審判を仰ぎたい」とし、新人は「多選により周囲が忖度(そんたく)し、県政が停滞して冷たい県政につながる」と主張した。だが選挙戦は盛り上がらず、当落を左右するような争点にはならなかった。

 福田氏と共産党系候補との一騎打ちは4回目で、今回を含めいずれも大差で退けている。ただ今回、相手候補の得票は8万票超で、無効票を合わせ一定程度の批判票が積み上がったと言える。投票率は32・05%と過去2番目の低さだった。最低とはならなかったものの低迷したままだ。6選という全国的にもまれな状況に、有権者が冷ややかに受け止めた結果との見方もできる。

 投票率の低さには危機感を持たなければならない。自民、公明両党の推薦を得て、25市町の大半の首長の支持、多くの各種団体の支援を受け盤石な福田氏に対し、対立候補の擁立は告示のわずか3週間前。立憲民主党などは衆院選などを理由に、候補擁立を見送った。

 選挙戦での活発な政策論争を通して、有権者に関心を持ってもらわないことには投票率は上がらない。そのためにも魅力ある候補者の育成・発掘は不可欠だ。政党や政治家にはその努力が求められる。福田氏は後継者育成に消極的だとの指摘は少なくない。現在の路線の県政を続けていくべきだと考えるのであれば、後継者育成は福田氏にとって6期目の最重要課題の一つと言えよう。

 福田氏は今回「未来への投資」をスローガンに、人口減少対策を最重要課題に位置づけた。公約では新たな官民組織の創設を盛り込んでおり、提言を受けて具体策に取り組むとしている。街頭では農林業を含む産業振興や子育て支援、女性活躍支援などを中心に訴えた。

 いずれも人口減に歯止めをかけるための仕掛けだ。人口減対策は「地方創生」が叫ばれた2015年以降十年来の課題で、これまでもさまざまな施策に取り組んできた。だが同年197万人だった県人口は23年に190万人を割り込み、今年10月1日現在で188万人まで減少した。人口減に歯止めをかけるのは並大抵のことではないが、この間旗を振り続けてきたトップとして減少スピードを遅らせることも含め、今後の4年間で一定の道筋を付けるべきだ。

 県民所得や工場立地件数が全国上位を維持するなど、福田県政の20年で本県の地力は確実に上がっている。新たな任期はその地力をさらに磨き上げる期間でもある。6選出馬の際に語った「自分の方がより栃木は光る」の言葉を、県民一人一人が実感し納得できる4年間にしてほしい。