ふんわりとしたラグビーボール型のパンに、粒入りピーナツバターを挟んだ懐かしい味わいの「ピッコロ」(180円)。ネーミングは「コロコロとしたピーナツパンだから。ふと頭に浮かんだんだよね」と、店主の蓮見利光(はすみとしみつ)さん(79)が目を細める。この道60年以上のベテランパン職人だ。
古くは花街としてにぎわった中央5丁目で1933(昭和8)年、利光さんの義父・重一郎(じゅういちろう)さんが店を開き、今年で創業90年。ピッコロをはじめ、あんこと生クリームを合わせた「あん生パン」(180円)、懐かしいグローブ型の「クリームパン」(150円)、創業当初からの「バニラパン」(150円)など約20種類のパンを毎朝、手作りで焼き上げている。
学校給食のパンを専門にしていた東京下町の店舗で修業を積んだ利光さんのパンはどれも柔らかく、市内の乳児院にも配達されている。二人三脚で切り盛りしてきた妻の侑子(ゆうこ)さんは4年前に旅立ち、跡継ぎもいないが「利用してくれるお客さんがいるからさ。閉めたい気持ちもあるけど、続けられるまで続けたいね」と、パン作りを生きがいにする。昭和の香りが残る街の懐かしいパン屋だ。
◆メモ 宇都宮市中央5の4の5▽営業時間 午前8時~午後6時(売り切れ次第終了)▽定休日 日曜▽(問)028・634・6919