ジェンダーバイアス(性別に基づく無意識の偏見)がいつ、どのように身に付くのかを探るため、下野新聞社が日光市の芹沼保育園で行ったジェンダー観のリサーチ。今回は、「強さ」と「優しさ」をテーマにした読み聞かせと髪形シルエットクイズの結果を紹介する。
自分の性に寄せる傾向
ある日、みんなの住むまちに大きな怪獣がやって来て、暴れ出したよ。みんなのおうちも壊されそう。「もう駄目」と思ったその時、みんなを守ろうと、ある人が突然現れて怪獣と戦い出したよ。この怪獣をやっつけに来た人はどんな人だと思いますか。
優しい人
ある日、歩いていたら、すってーんと転んじゃいました。「痛いよぉ」と泣いていたら、助けに来てくれた人がいました。別の日、今度は迷子になって泣いていたら、同じ人が助けに来てくれたよ。この助けてくれた人はどんな人だと思いますか。
「強さ」がテーマの読み聞かせでは、街で暴れている怪獣のイラストを園児たちに見せ、「怪獣をやっつけた人は男の人かな。女の人かな」と尋ねた。

年中児27人(男14人、女13人)のうち、「男性」と答えたのは9人(男8人、女1人)、「女性」と答えたのは9人(男1人、女8人)、「どちらでもいい」と答えたのは9人(男5人、女4人)。
それぞれに理由を問うと、男性と答えた男児たちは「かっこいい」「強い」と答えた。女性と答えた女児たちは「優しいし、強い」「困っている人を助けてくれる」とコメント。女児に人気のアニメ「プリキュア」の影響もあり、女性も怪獣に立ち向かうことができると感じているようだ。
「優しさ」がテーマの読み聞かせでは、泣いている子どもを助けた人物を「男性」と思ったのは12人(男10人、女2人)、「女性」は11人(男2人、女9人)「どちらでもいい」は4人(男2人、女2人)だった。
リサーチ方法を監修した足利短期大こども学科の林恵(はやしめぐみ)教授はいずれの読み聞かせでも男児の多くが「男性」、女児の多くが「女性」と回答した点に着目。「子どもたちは自分の性別に寄せて回答している。自分と同じ性別に共感したり、仲間意識を感じたりして、『私はこうありたい』と自分ごととして捉えているようだ」と分析した。
多様な在り方に気付き
シルエットクイズでは、「ショートカットの横顔」と「後頭部で髪を一つ縛りにした横顔」のイラストを示し、男性と思うか女性と思うかを聞いた。

ショートカットの結果は、「男性」が10人(男9人、女1人)、「女性」が12人(男2人、女10人)、「どちらでもいい」が5人(男3人、女2人)。女性と回答した女児たちは、クラスメートや家族などに髪が短い女性がいると話していた。
一方、一つ縛りでは「男性」4人(男2人、女2人)、「女性」19人(男10人、女9人)、「どちらでもいい」4人(男2人、女2人)という結果。「女性」に偏る傾向が見られたが、「テレビや友だちのお父さんで髪を縛っている男の人を見た」「忍者は髪を縛っている」と話す園児もいた。林教授は「いろいろな髪形の人がおり、男性女性とこだわる必要がないと気付いている」と評価した。
事例に照らして考える園児たち
今回のリサーチ結果全般について、林教授は「園児たちは子どもながらに社会の在り方を鑑みている」と総括。「大人がバイアスに気付き、考えや行動を変えなくてはならない」と改めて強調した。