新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」へ引き下げられた。3年超におよんだ「コロナ下」が転換点を迎えた。折しも頬をなでる初夏の風が心地よい季節。負い目を感じることなくマスクを外した解放感の一方で、終息していないことへの警戒感を抱きながら、社会は日常を取り戻そうとしている。
移行後初の週末、ショッピングセンターに足を運んでみた。若い世代はマスクなしが見られるが、高齢者はマスク姿が目立つ。共同通信社の先月の世論調査によると、年齢層が上がるほど、つまり重症化リスクの高い層ほど感染再拡大への警戒感は根強い。専門家は「第9波」の可能性を指摘する。ウイルスが存在している限り、それは十分に起こりうる。
今後の感染対策は個人の選択が尊重される。状況に応じた判断力と想像力が試されるということだろう。「まだ普通の病気ではない」。政府新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂(おみしげる)会長の指摘を、もうしばらく胸に刻んでおきたい。