<両右腕譲らぬ投げ合い 明暗分けた十五回の攻防>
【2007年夏県大会】
▽準決勝(清原球場)
青藍泰斗
000 001 000 000 000 │1
000 100 000 000 001x│2
宇南
(延長十五回)
青藍泰斗・池田は渾身(こんしん)のストレートをバットにとらえられた瞬間が「はっきり見えた」という。
打球は右中間に落ち、サヨナラの走者が歓喜とともにホームを駆け抜けた。
この夏投じた657球目。「最高の一球だった」。捕手の渡辺がそう声を掛けた。「そうだな」。池田は打球が落ちた外野をただ見詰めていた。
「とても暑い夏の日でした。息子は宇南の選手としてグラウンドに立ち、私は応援でスタンドにいました。両チームの頑張りは優勝にも勝るとも劣らない」(下野市、田村利江さん、47歳)
青藍泰斗・池田。宇南・松本。両右腕は一歩も譲らなかった。
「素晴らしい投げ合いだった。特に十五回の攻防。青藍はチャンスを潰し、宇南は3安打している打者に代打を送った。ドラマチックな展開に鳥肌が立った」(宇都宮市、阿久津翔太さん、26歳)
引き分け再試合も見え始めた延長十五回、青藍泰斗は無死二塁のチャンスをつかむ。しかし、ここで松本の気迫が勝った。連続三振でピンチを切り抜ける。表情を変えず常に淡々と投げる松本は、三振に切って取るたびに、雄叫びあげた。
その裏の宇南の攻撃。篠崎監督は、ここまで3安打の田村に代打・武内。その武内が期待に応え中前打で出塁すると、最後は神林のサヨナラ打を呼び込んだ。
池田はこの試合、15奪三振。一方の松本は20三振を奪い、怪物・江川(作新)が持つ大会通算奪三振記録75まで、あと三つに迫った。
その松本はこうコメントを寄せている。「同点のまま何回までも続きそうな不思議な雰囲気でした。あんな試合はもう一度やれと言われてもできません」
夢に届かなかった青藍ナイン。池田は崩れ落ちそうになる仲間を笑顔で支えていた。「感動しました。負けたけど、池田君の笑顔、最高でした」(日光市、小檜山文江さん、48歳)
「うれしいんですよ。こんないいやつらと野球がやれたことが。おれのせいなのに、みんながおれに謝ってくることが…」。池田の笑顔に一筋の涙が伝った。