栃木県栃木市で昨年11月、女性がダンプカーにはねられ死亡した事故に関連し、ダンプカーを所有する土砂運搬業者が常習的に過積載を行っていた実態が栃木県警の捜査で浮かび上がった。義務付けられた安全運転管理者(安管)の選任をしていなかったことも判明。県警は6日までに、道交法違反(過積載の下命、安管選任義務違反)の疑いで同市内の運搬業者と50代男性社長を書類送検した。男性社長は取材に対し「過積載をしなければ経営が成り立たなかった」などと釈明した。
事故は昨年11月29日未明、同市都賀町家中の市道で発生。自転車の40代女性が、30代男性運転手のダンプカーに追突され死亡した。県警の事故捜査の過程で、ダンプカーの過積載の疑いなどが浮上した。
県警は過積載について、走行中にブレーキをかけてから車が止まるまでの制動距離が伸びるほか、車両がバランスを崩しやすくなると危険性を指摘。「重大事故につながる恐れがある」と取り締まりに注力する。
捜査関係者によると、業者と男性社長の送検容疑は、事故前日の同28日午後、同市内の事務所で、最大積載量の2倍弱の砂をダンプカーに積むよう指示し、同市内から埼玉県内まで運転手に運搬させた疑い。
業者は従業員の雇用時に過積載を受け入れることを条件としていた。最大積載量の2倍超の過積載が発覚すると運転手が運転免許停止となるため、2倍を超えないようにしていたという。
過積載はなぜ、常態化していたのか。関東ダンプ協議会栃木支部によると、業界では土砂を出す側と、受け取る側との間でおおよその運搬代金が決まり、その範囲内で運搬業者が請け負うことが多いという。担当者は「実質的に運搬業者が価格交渉することが難しい側面がある。過積載は長年の課題」と指摘する。
男性社長は取材に「土砂運搬は単価が安く運送屋はどこも悲鳴を上げている。やりたくてやっているわけではない」とこぼした。
一方、県警は一定台数の車両を所有する場合に義務付けられた安管を選任していなかった疑いでも立件した。千葉県八街市で2021年に児童5人が飲酒運転の大型トラックにはねられ死傷した事故を受け、22年施行の改正道交法により安管選任義務違反は罰金が増額された。栃木市の業者の書類送検は、改正法施行後の県内初摘発だった。
業者は安管が担う日報の記録などは行っていたとする一方、選任義務の規定は「知らなかった」と話した。