藤沼正明さん

 今や国民の大半が利用する「LINE」で、ユーザー一人一人の関心に合わせたニュースを届ける。「LINEを通して、ニュースを身近なものに感じてほしい」。2021年には月間利用者数7700万人、154億ページビュー(閲覧回数)を達成した。

 スポーツ専門誌やフリーのライターを経て、05年にLINEの前身であるライブドアに入社。ニュースポータルサイトの責任者を務め、13年のLINE NEWS立ち上げに関わった。

 当時の担当者は、わずか10人足らず。ニュースを集約するサービスとしては「最後発に近い」状況からの挑戦が始まった。

■「最後発」から

 最優先したのは、ユーザーの支持拡大だった。ライターとしての人脈も生かし、15年12月には新聞社などにアカウントの運用を委ねるモデルを構築。同5月に1200万人だった月間利用者数は、18年3月に6300万人まで達した。

 現在も関係メディアとの交渉などを担い、編集局で45人の正社員を束ねる。躍進を支えたのはLINEとスマートフォンの親和性を武器にした戦略。「いち早くスマホに最適化したニュースサービスの提供を意識した」

 LINEのサービス開始は11年6月。スマホが普及し始め、同3月の東日本大震災で電話回線の障害が多発した。同社は、リアルタイムでメッセージをやりとりできるメッセンジャーサービスに1番手で乗り出した。そうした“目利き力”も強みに成長を続ける同社の一員となり、「タイミングを逃してはいけない」と肝に銘じる。

■情報の「粒度」

 老若男女がスマホを持ち、月間9300万人がLINEを利用する現在。ユーザー情報を基に、個人の興味に合ったニュースを届ける仕組みづくりを進める。

 着目するのは、ローカルの話題など「粒度の細かい情報」だ。「ユーザーの人生がちょっと豊かになるような未来がつくれるのではないか」と狙いを語る。

 テクノロジーの発展により、首都圏でも「地方に目を向ける機会が増えている」と感じる。「東京で得た経験や人脈を生かし、地元に貢献したいとポジティブに考える時代に突入している」と分析し、自身の夢も語った。「残りの人生で、宇都宮市や栃木県の価値を高めるようなプロジェクトに関わってみたい」

 経歴  宇都宮市出身。宇都宮高、専修大経済学部卒。専門誌「サッカーダイジェスト」やフリーランスの編集者兼記者を経て、ライブドア入社。現在はLINE NEWSや検索事業のアライアンス、編集、広告・マネタイズ領域を管掌する。都内在住。

 企業メモ  LINE 2019年12月設立。資本金342億円。売上高3067億円(22年3月期)。社員数3100人(22年10月末)。東京都新宿区四谷1の6の1。