歴史的建造物や住宅街の石塀など、東京都内にも息づく宇都宮市産の大谷石。近年は内装材や装飾品としても用途を広げている。

 虎ノ門のビル街の一角で大正時代の雰囲気を残す老舗そば店「虎ノ門大坂屋砂場」(港区)は、店舗脇にある厨房(ちゅうぼう)棟の外壁材に採用した。まだ白みが強い大谷石が、木造建築の傍らで映えている。

虎ノ門大坂屋砂場。歴史的な建物の側に、大谷石を外壁に使った厨房棟(右側)がある

 国指定の登録有形文化財でもある同店舗は、1923年の建設後、戦禍や災害に耐えて現存。客足が途絶えない名店だ。

 6代目店主の稲垣隆俊(いながきたかとし)さん(52)は大谷石を、「見た目が面白く、独特の芸術性が好き。木造にも合う」と評価。厨房棟についても「時間が経つと味も出て、さらに店舗と融和していくのでは」と期待を込める。

 同店への出荷を担った大谷石産業(宇都宮市田野町)の飯村淳(いいむらじゅん)広報部長(60)は「大谷石はさまざまな素材と調和し、和にも洋にも合う。高級感もあり、素朴さもある」。テレビドラマやCM、住宅展示場などで目にされる機会も増え、同社による出荷はマンションや商業店舗をはじめ全国的に増えているという。

 素材が持つ魅力に注目が高まる中、特殊な加工技術も生まれている。カネホン(同市大谷町)では、石を染色する「大谷染石」を開発した。

 使い道がない在庫を活用する目的で、高橋鉄雄(たかはしてつお)会長(73)が約2年にわたり実験を繰り返した。一見してれんがやタイルにも見える重厚感ある風合いが特徴で、高橋卓(たかはしまさる)社長(48)は「一つ一つ染まり方が違っておもしろい。資源が限られている中で、無駄なく使うことができる」と説明する。

大谷染石の外壁が目を引く6DegreesMarket

 2021年11月にオープンしたハンバーガーショップ「6 Degrees Market」(板橋区)では、店舗の前面に染石を採り入れた。宇都宮市出身で、リノベーション事業も手掛けるオーナーの宮路真宏(みやじまさひろ)さん(44)は「若者に人気のブルックリンスタイルとテイストがよく合う。地元の石として東京に広めたい」と意欲を示す。

 かつて建材として首都圏一帯に広まったものの、一時は出荷量の激減に直面した大谷石。形や風合いを変化させながら、人々の生活に寄り添い続けている。

 
◆大谷石 機能面では断熱性や多孔質構造による消臭効果に加え、石に含まれるゼオライト成分によるリラックス作用もあるとされている。近年ではカウンターやテーブル、ワインセラーといった家具として使われることもある。