JR池袋駅から目白方面に数百メートル。アパートや一軒家が肩を寄せ合う閑静な住宅街で、大谷石塀が連なる景色と出合った。

 その中心に自由学園明日館(みょうにちかん)(東京都豊島区)がある。新聞記者だった羽仁もと子(はにもとこ)・吉一(よしかず)夫妻が1921年、女学校として創立。夫妻の友人で建築家の遠藤新(えんどうあらた)を通じ、旧帝国ホテル建設のため来日中のフランク・ロイド・ライトが設計した。

 屋根の高さを抑えた水平に伸びるプレーリースタイル(草原様式)と幾何学的なデザイン、敷石や石塀に多用した大谷石。ライト建築の特徴が見て取れる。

自由学園明日館。敷石や柱、石塀に大谷石を使っている

 大谷石を見ると、精巧な彫刻を施した旧帝国ホテルとは対照的に、いたって素朴で簡素。どこか宇都宮の街並みを思わせる親近感がある。

 敷石の大谷石は所々大きさが異なる。同館広報担当の岡本真由美(おかもとまゆみ)さん(55)によると、「帝国ホテルで使わない端材を転用したのではないか」とのこと。屋外の敷石と館内の廊下は大谷石で地続きになっており、大雨が降ると土のうで浸水を防ぐのだという。

 館内で大谷石が最も象徴的に使われているのは、現在も結婚式などを催しているホールだ。冬には実際に火をたく暖炉の他、空間を支える柱にも大谷石を使用。大きな窓から光を採り、壁に宗教画を施した空間は、大谷石の荘厳さも相まって神秘を感じさせる。

大谷石で組まれたホールの暖炉。実際に火をたくため、すすがついている

 遠藤の設計で27年に完成した講堂も、大谷石を多用している。自由学園女子部講堂(東久留米市)と本県の久保講堂(真岡市)と合わせ、遠藤の「講堂3部作」とされる。ここにも本県との意外な縁があった。

 奇跡的に戦禍を逃れ、国の重要文化財でもある明日館は、今も市民が生涯学習や演奏会に使用する「現役」の施設だ。岡本さんは「文化財を使いながら守る『動態保存』の先駆けです」と説明してくれた。

 市民に根付いて生き続ける明日館を、大谷石が支えている。「建物は使ってこそ価値がある。使っていくうちに付いた傷も、歴史の一部です」と岡本さん。雨風を受けて年季が入った敷石に、文化を受け継ぐ人々の思いを感じた。

◆自由学園明日館 生徒数の増加に伴い、学校は1934年に東久留米市に移転。明日館は卒業生の活動拠点として使われた。開館時間は通常午前10時~午後4時。毎月第3金曜には夜間見学も行う。見学のみ500円、喫茶付き見学800円。中学生以下無料。月曜休館。