那須町特産の芦野石。都心でも幅広く使用されているという。“硬軟”両面から名所を訪ねてみた。

 まずはJR池袋駅の待ち合わせスポットとして有名な石像「いけふくろう」。平日の昼下がりでも、10人ほどの人だかりができていた。この石像が芦野石で作られている。

 台座を含めた高さは1.6メートル程度。丸みを帯びた形が愛くるしく、独特で素朴な風合いが温かみを感じさせる。

JR池袋駅の石像「いけふくろう」。待ち合わせスポットとして有名だ

 説明板には「JR発足記念 1987」と記されている。JR東日本東京支社によると、「当時の池袋駅にはこれといった待ち合わせ場所がなかったため、JR東日本発足と合わせ、何か目印になるようなものとして企画した」とのこと。昔、同駅にフクロウがいたことが命名の由来のようだ。

 芦野石は、大谷石より硬く、御影石よりは軟らかいため、加工しやすい性質。昔から石垣や塀、庭石、墓石、地蔵など用途は広い。当時の駅員に本県出身者がおり、那須町の石材会社に制作を依頼した。

 いけふくろうの隣には3羽の子ふくろう像も。こちらはフクロウ像を通じて地元・豊島区の魅力を発信している「梟(ふくろう)の樹を創る会」が企画した。今では「親子のふくろう」と親しまれている。

 次に足を運んだのは永田町。首相官邸の目の前に立地する「ザ・キャピトルホテル東急」だ。メインエントランスや中庭などの外構の一部は、白井石材(那須町)が施工した。

 政財界の著名人が行き来する玄関の小径には、大小約90個の芦野石による石組みの台がある。社長の白井伸雄(しらいのぶお)さん(66)は「簡単なようだが、大きな石を切って組み合わせるため手間がかかる。天板や側面の仕上げにもいろんな変化をつけた」と説明。閑静な超高級ホテルにふさわしい、落ち着いた趣だ。

ザ・キャピトルホテル東急のメインエントランス。大小約90個の芦野石が出迎えてくれる

 芦野石は戦後、首都圏にまで供給先が拡大した。1980年代に最盛期を迎えたが、輸入石材に押され全体の出荷量は減少。今では社会変化に対応し、新たな需要を開拓している。

 地元で「石の美術館」を運営し、産地活性化に努める白井さん。他の産業や素材とのコラボレーションを念頭に置きながら、「自然から頂いている資源なので、無駄なく有効に生かしながら生産を継続していきたい」と次代を見据えた。

◆芦野石 1870年代から那須町芦野で採掘されている。住宅の門柱や塀、公園の外構、建築資材など用途は幅広い。芦野石細工は県伝統工芸品。隣接する福島県白河市で産出される同種の石は「白河石」と称している。