安倍晋三首相(65)は辞任する意向を固めた。政権幹部が28日、明らかにした。自身の体調が悪化し、首相の職務を継続するのは困難と判断した。2012年12月の第2次内閣発足から約7年半。意欲を示した憲法改正や北朝鮮拉致問題の解決に道筋を付けられないままの退陣となる。「安倍1強」と評されたが、新型コロナウイルス対策は迷走し、内閣支持率は下落傾向に入っていた。自民党は速やかに総裁選を実施し、新総裁を選出する。

 首相は今月17日、東京・信濃町の慶応大病院で約7時間半にわたって「日帰り検診」を受け、24日に再び受診した。第1次内閣時の07年には持病の潰瘍性大腸炎が悪化して退陣。その後は薬の効果もあって12年12月の第2次内閣発足以降、激務をこなしていたが、日帰り検診をきっかけに、政府、与党内で体調不良説がささやかれていた。

 「ポスト安倍」候補には、自民党の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らが意欲を示している。コロナ禍の中、政治空白をつくるべきではないとして安倍政権を支え続けてきた菅義偉官房長官を推す声もある。

 第2次内閣発足以降、首相は最優先課題として経済政策「アベノミクス」を推進。自然災害をはじめとした危機管理を看板に政権を安定化させてきた。しかしコロナ対応では「スピード不足」「不十分」と非難された。

 長期政権のおごりや緩みが生じているとの指摘もあった。森友学園問題では首相夫人が一時名誉校長だった学校法人に国有地が8億円余り値引きされて売却された。公費で賄われる首相主催の「桜を見る会」では私物化疑惑が浮上。内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案は著名人らがツイッターで相次いで批判し、成立断念に追い込まれた。

■解説■ コロナ対応、求心力も低下

 安倍晋三首相が辞任する意向を固めたのは、自身の体調不良によってこれ以上重責を担い続けるのは不可能と判断したためだ。新型コロナウイルス対応などで求心力が低下し、政権運営で結果を出すのが困難になったことも影響した。景気低迷からの脱出に道筋を示さないままの退場となる。主導した来年夏の東京五輪・パラリンピックも見届けない。

 首相の自民党総裁任期は来年9月まで。黒川弘務(くろかわ・ひろむ)・前東京高検検事長の賭けマージャン問題など不祥事に加え、コロナ対応の不手際で内閣支持率が下落傾向にある中、内閣改造や衆院解散・総選挙で政権浮揚を図る案も残されていた。

 しかしこれまで維持してきた健康がすぐれなくなり、さまざまな意見、批判を受けながら首相の激務をこなしていくだけの気力を大きく失ったとの見方が出ている。

 憲法改正や北朝鮮拉致問題の解決、北方領土返還など自身が掲げた課題の解決が実現できず、政治目標を見いだせなくなったことが辞意を後押しした可能性もある。

 新型コロナを巡っては初動対応が後手に回り、経済対策では支援の遅れが指摘された。持続化給付金の委託事務では「丸投げで不透明」だと批判され「国民との意識の乖離(かいり)」も浮き彫りとなっていた。

■ズーム■ 安倍晋三首相

 日本の現職首相。2006年9月に発足した第1次内閣は、体調不良により1年で退陣した。自民党が野党転落後に臨んだ12年12月の衆院選で政権を奪還し、第2次内閣をスタートさせた。祖父は岸信介元首相、父は安倍晋太郎元外相。これまで連続在職トップの佐藤栄作元首相は大叔父に当たる。1954年9月生まれの65歳。衆院山口4区選出で当選9回。成蹊大卒。神戸製鋼所でサラリーマンを経験した。趣味はゴルフ。妻は昭恵氏。


【号外】安倍首相が辞意=表面(8月28日)
 

【号外】安倍首相が辞意=裏面(8月28日)