古民家の自宅に民泊とパンの店の看板を掲げた君島さん夫婦と、集落に27年ぶりに生まれた赤ちゃんの琉生ちゃん

 【茂木】過疎と高齢化が進む山あいにある町内の11戸の集落に27年ぶりに赤ちゃんが生まれ、すくすく育っている。自然と生きる暮らしを求めて昨年移住し親になった若い夫婦は、築100年余りの古民家で、町で初めて届け出た民泊事業を今月から始める。家族3人は、集落の住民に喜びを与え、温かく見守られ、支えられている。

 「今度はみんなで花見すんだ。抱っこさせてもらうのが楽しみだ。あはは」

 小深の山中地区11戸の前区長小林耕一(こばやしこういち)さん(72)は、今年元日に全戸が集まり集会所で開いた新年会で、全員が久々に集落に生まれた赤ちゃんを抱いた喜びを語る。「赤ちゃんを抱っこすると、年寄りはみんな元気になるんだわ」

 抱っこされたのは昨年9月25日、農業君島佳弘(きみじまよしひろ)さん(32)と妻紀子(のりこ)さん(38)の間に生まれた長男琉生(れお)ちゃん(6カ月)だ。集落には20人余りが暮らすが、子や孫は離れ、独居や夫婦だけの高齢世帯が多く、子どもはいない。

 大田原市出身で自給自足の暮らしを志向し農業の研修も受けた佳弘さん。東京生まれで、東日本大震災後の宮城での経験から、お金がないと何も手にできない暮らしに疑問を持った紀子さんには、栄養士の資格がありケーキ店勤務の経験もある。

 知人らの薦めと支援を得て、約200平方メートルもある古民家を借り福島から移り住んだのが昨年3月。雑穀や豆類を作り、「かまど」で煮炊きし、五右衛門風呂を使う暮らしだ。集落の住民が、耕地を貸し、農機で耕し、薪を分け、手助けしてきたのも、地域総出の草刈りなどに参加し地域によくなじんだ夫婦を、誰もよそ者と思っていないから。

 今年1月には、県内の経済団体など主催のビジネスプランコンテストで里山での持続可能な観光開発を掲げた2人の古民家宿経営プランが最優秀賞を受賞。その際の創業支援費を元手に水回りなどを改修、「雑穀のパンと宿 月noco(つきのこ)」を開業し、5日に初めて客を迎える。

 宿の周囲では鳥が鳴き、夏にはホタルが舞う。2人は「都会で疲れた人に安らぎを求めて来てほしい。里山を五感で体験して」と願う。地域の人は、両親が「宿の看板役に」と期待する琉生ちゃんの成長と宿の順風を願い、見守っている。

 (問)月noco080・6807・5774。