無料カット券を持って来店した小学2年生の女の子の髪を切る大倉さん

 【那須塩原】創業から40年近く、経済的に厳しい家庭の子どもの髪を無料でカットしている美容室がある。太夫塚6丁目の「五番街」。子ども時代に、親との死別や闘病などで苦しい生活を強いられたという代表の大倉太喜生(おおくらたきお)さん(63)が「誰かが助けてくれたから、誰かに恩返ししよう」と始めた。無料カットしていた子が大人になり、初めてもらった給料で髪を切りに来てくれたこともある。「そうした出来事が自分を励ましてくれる」とずっと続けていくつもりでいる。

 大倉さんは那須町生まれ。中学1年生の時に父親が脳梗塞で倒れ半身不随になり、中学3年生時に母親を病気で亡くした。父親と3歳下の弟との3人暮らしになり、父親の介助をしながら登校する生活を送った。

 「給食のおばちゃんからパンをもらったり玄関に野菜が置いてあったり」。苦しい生活の中で助けられた経験が活動の原点という。

 本当は進学したかったが、中学卒業後に上京。住み込みで美容師としての腕を磨いた。帰郷し、25歳で市内に店を構え「自分にできることは髪を切ること。似た境遇の子が夢を諦めずにいられるよう手助けしたい」と無料カットを始めた。

 社会福祉協議会を通じて、経済的に厳しい家庭の子どもを対象に年2回使える無料カット券を配布。「髪をきれいにしてもらい、学校でいじめられなくなった」「美容師になりたい」。笑顔や希望を抱く子どもたちの姿が、40年近い活動を支えている。

 今月中旬、派遣社員として母子家庭を支える母親(41)が長女(8)を連れて訪れた。母親は「家計に余裕がないから助かる。何より応援されている気がして力をもらえる」と話す。

 「生きている間は続ける」という大倉さんは「幸せを生み出したい」と言う。「うれしそうに帰る子を見ると、優しい大人になれると感じる。そういう子が1人でも増えるといいな」