久しぶりに取材で壬生町の獨協医大病院小児科を訪れた。外来担当医の掲示板に「杉田」という懐かしい名前を見つけた。退職したとばかり思っていた。

 「杉田」とは杉田憲一(すぎたけんいち)医師(71)。取材相手でもあり、園児だった長女の主治医でもあった。小児がんや感染症などが専門で、6年前に同大を定年退職。当時から患者や家族の心のケアに力を注いでいたが、今は「とちぎメディカルセンターしもつが」(栃木市)と、同大で小児科医として不登校や発達障害の子どもたちを診療している。杉田医師が診る子どもたちは300人近い。医療の進歩で重い疾病は減ったが、情報化社会の中で人間関係に疲れ心病む子どもが増えているという。「家庭や社会で居場所のない子が全体の3割近くいる」と指摘する。久しぶりの再会は子どもの命を守ることを熱心に語った9年前と同じだった。

 別れ際に娘が今春、社会人になることを伝えると「大きくなったね」と喜んでくれた。子どもの悲しいニュースが絶えないが、杉田医師のような人たちが子どもとその家族を救っている。