敵将の言葉にこれほど心を揺さぶられるとは思わなかった。

 サッカーJ3の栃木SCが3日、静岡県沼津市で行われた沼津との今季最終戦を1−1で引き分け、3季ぶりのJ2復帰を決めた。

 最終戦前の段階で上位は3チームが勝ち点1差内にひしめく大混戦。ただ、「引き分け以上で昇格」だった首位栃木に対し、2位沼津は本拠地の収容人数などが基準以下であることからJ2ライセンスを取得できず、仮に優勝しても昇格できないことが決まっていた。

 試合は前半7分に沼津が先制したが、後半32分に栃木が追い付いた。終盤、栃木は徹底して守りを固めて沼津の猛攻をしのぎきった。試合終了の瞬間、イレブンとサポーターは涙を流して大喜び。興奮冷めやらぬ中、ピッチ上で沼津の最終戦セレモニーが始まった。

 「昇格おめでとうございます」。あいさつに立った吉田謙(よしだけん)監督は激闘を繰り広げた栃木SCを祝福した後、少し間を置いて「僕の気持ちを聞いて下さい」と口にした。黄色一色で染まった栃木のゴール裏が静まり返った。

 「僕らは優勝しても昇格できない。だけどピッチに立ったら100%でプレーする。そんな僕らの姿を見ていただいたと思います」

 沼津は静岡で4番目のJクラブとして今季から参戦。選手は午前中に練習、午後に仕事をこなすハードなスケジュールをこなしながら16勝11分け5敗の3位と堂々たる成績を残した。昇格という目標がない中でモチベーションを保つことがどれだけ難しいか。気迫のこもったプレーで最後まで栃木SCを苦しめた宿敵に尊敬の念を覚えた。

 「必ず僕らはいつの日か昇格します」。吉田監督の力強い宣言に栃木SCサポーターは温かい拍手を送った。素晴らしいライバルとの出会い。J3で栃木SCが手にした財産の一つとなるに違いない。