僧侶の読経が続く中、犠牲者の名前が読み上げられる。足利市岩井町で9月に開かれたカスリーン台風の慰霊祭。300人以上の命を奪った未曽有の災害から、今年で70年が過ぎた。

 同市猿田町、徳蔵寺住職源田晃澄(げんだこうちょう)さん(75)は、1947年9月に発生したカスリーン台風による死者を追悼するため犠牲者を調査。地域住民らも協力し、堤防上に市内の死者・行方不明者321人の氏名と年齢を記した慰霊碑を建立した。

 夜間に発生した水害だったため、自宅で休んでいたのだろう。夫婦や兄弟、親子とみられる人が多く、中には5カ月の赤ちゃんも含まれる。どれほど無念だったか。石碑に刻み込まれた一人一人の名前からは、321人とひとくくりにはできない命の重みを感じる。

 源田さんは、学校などで台風被害を伝える活動も行ってきた。「悲劇を二度と繰り返さないよう、命ある限り伝え続ける」。被害を知る当事者が時間とともに減り続ける中、源田さんの決意を胸に刻み、報道を続けていきたい。