望まない妊娠を防ぐために性交渉後に服用する緊急避妊薬「ノルレボ」が処方箋不要の市販薬として薬局やドラッグストアで買えるようになった。女性の権利保護の観点から世界保健機関(WHO)が推奨しており、既に約90の国・地域で市販されている。避妊の失敗や性暴力による妊娠から女性の心身を守る第一歩としたい。

 緊急避妊薬は不測の事態に対処するための薬である。個々の家庭はもちろん、学校での性教育の拡充なども今後求められよう。薬に関連した正しい知識の普及に努めるほか、ジェンダーや人権を含めた包括的な教育が欠かせない。

 緊急避妊薬は「アフターピル」とも呼ばれ、性交後72時間以内の服用で女性の排卵を抑制するほか、受精を防ぐなどの効果を持つ。72時間以内の服用で8割以上の確率で妊娠を防ぐことができる。今月10日時点で全国約8千店、本県では135店で購入でき、厚生労働省のホームページで店舗名などを公開している。

 適正に使ってもらうため、薬剤師の面前で服用するルールがある。購入できるのは服用を望む女性のみで、代理人や男性は不可。16歳未満や短期間に繰り返して購入する人には医療機関の受診を勧め、性暴力や虐待が疑われる場合は地域の支援機関につなぐ。

 2023年度の人工妊娠中絶は全国で約12万8千件に上った。本県は1463人で20代以下がほぼ半数を占めた。中絶を選んだ理由はさまざまあるだろう。緊急避妊薬の使用によって意に反した妊娠を防ぎ、心身への負荷が大きい中絶手術が一件でも減ることを期待したい。

 一方、購入が容易になることで性交の相手が緊急避妊薬の服用を強要して避妊しなかったり、女性のみが避妊の責任を求められたりする懸念もある。このような事態はあってはならない。

 本県では性や妊娠に関する正しい知識を広め、健康管理を促す「プレコンセプションケアセンターとちぎ」が本年度から活動を始めた。県が県助産師会に委託し、学校や企業が実施する若者向けセミナーへの講師派遣などを行う。

 県教委も連携を深め、こうした機会を学校で積極的に活用すべきだ。自分の体や性に関することは自分で決め、守る「性と生殖に関する健康と権利」への理解を広めるきっかけにもなるに違いない。