塩谷町が県内初の「医療MaaS(マース)」の導入に向け、準備を進めている。通信機器などを搭載した車両で医療サービスを提供する取り組み。実証実験を経て2028年度の本格導入を目指している。情報通信技術(ICT)などを最大限活用し、持続可能な地域医療体制の構築につなげてほしい。

 前段として町は1月末から、「保健福祉マース」を始めた。総務省の過疎地域支援事業交付金2千万円を活用。マース車両が地域サロンに出向き、オンラインで保健師や管理栄養士による保健指導、栄養相談などを実施する。

 医療マースでは、この車両に酸素飽和度や血圧を測定する装置、電子聴診器、心電計なども備える。看護師が搭乗して患者宅を訪問。測定したデータを医療機関にいる医師に送信して、医師がオンライン診療を行う。

 26年度の夏ごろに実証実験を開始し、28年度の本格導入を目指す。ただ、処方箋を届ける仕組みや支払い方法など課題も少なくない。スムーズな運用のためには、今後も地元医師会などとの丁寧な協議や検討が求められる。

 町では高齢化率が43・4%(25年7月現在)に上り、在宅医療の充実を望む町民は4割を超える。一方で医師の不足や高齢化もあり、訪問診療利用者は1割程度にとどまっているのが実情という。

 町内には診療所が4カ所あるが、産科や婦人科、小児科はない。入院病床もなく、町外医療機関に依存している状況だ。また高齢化や町内の公共交通網などを踏まえれば、受診までの移動の問題も軽視できない。

 町は24年、民間の有識者グループ「人口戦略会議」から消滅可能性自治体と指摘された。移住定住、人口減少対策にも医療体制の整備は必要不可欠だ。そのための一手として打ち出した医療マースを確実に軌道に乗せてほしい。

 医療マースには現在、4診療所の医師に参加を依頼しているという。将来に向けては、医師の確保も重要になるだろう。人件費や車の維持など費用もかかる。

 効果的な運用には、住民の理解も欠かせない。保健福祉マースや実証実験などを通して一層の周知を図るべきだ。地域医療で同様の課題を抱える自治体や地域は少なくない。町の事例がモデルケースにもなるよう期待したい。