宇都宮市が移動販売事業を開始した。高齢者の生活支援に加え、買い物を通じて同じ地域で暮らす住民同士の交流を後押しする狙いがある。県都のような都市部ほど、人間関係は希薄になりがちだ。見守りや会話の場となる「社会の装置」としての役割に、移動販売事業は大いに期待できる。導入した地域でいかに継続性を確保するかが重要だ。持続可能な体制を構築し、生活インフラとして欠かせない事業として定着させたい。

 昨年12月からの実施に先立ち、市は協力事業者を募り、4社と連携協定を締結した。各事業者と、移動販売を希望する地域や高齢者福祉施設とのマッチングを市が担い、実施日などを調整している。市内39地区のうち、宝木、国本などの3地区と、高齢者の7施設で事業が始まった。

 背景にあるのは高齢化の進展である。市の高齢化率は2024年度末で26・5%と、県平均の30・7%(24年10月)を下回るものの、介護保険制度が始まった2000年度の14・8%から10ポイント以上増えた。65歳以上の単身高齢者も、同年の8312人から20年に2・8倍の2万2945人となり、40年には3万5千人に達すると見込まれている。

 本県は依然として車に頼らなければ生活しにくい社会だ。高齢化に伴って運転免許証の返納が進めば、買い物に不自由する人は増えるだろう。買い物は生活の入り口であり、外出や会話のきっかけにもなり得る。市は自治会や地区社会福祉協議会などと連携し、移動販売の利用者が、市内各地にある仲間づくりや生きがいづくりの場「ふれあい・いきいきサロン」などにも足を運びやすくしたい考えだ。

 移動販売は便利なサービスにとどまらず、健康寿命の延伸を後押しし、地域コミュニティーを強化する機能を併せ持つ。人口減が進む中、安全安心なまちづくりを支える重要な装置と位置づけたい。

 一方、事業者にとって採算性は無視できない。効率的なルート設計は不可欠だ。導入を検討している地域や既に手を上げている施設があり、今後ニーズが拡大する可能性も高い。マッチングを担う市は柔軟に対応していくとしているが、ルート設定は一筋縄ではいかない。事業への理解が地域住民に広がるよう目配せしつつ、事業がスタートした地域で移動販売が定着する体制を構築してほしい。