食中毒を引き起こすボツリヌス菌について、2回にわたって紹介します。

 ボツリヌス菌は土壌や川や海の土砂の中に外皮に覆われた「芽胞」の形で、乾燥や低温高温、消毒などにも強い耐久性をもって生息しています。酸素を嫌う嫌気性菌です。菌の増殖に良い条件がそろうと、いきなり食品の中などで増殖を始め、それを食べた人に深刻な食中毒を起こすのです。

 

 食べ物の中でボツリヌス菌の芽胞が発芽・増殖すると、ボツリヌス毒素(神経毒素)を産生します。この毒素が含まれた食品を人が食べると、通常8~48時間の潜伏期で全身の神経まひなどを起こします。まぶたが下がり、目がかすみモノが二重に見えたりします。また、上手に飲み込めない嚥下(えんげ)障害やろれつが回らなくなるなどの症状があらわれます。この脳神経まひがさらに進行すると、首、肩、腕、足に弛緩(しかん)性のまひが広がります。軽度から全身性の神経まひまでありますが、気道の閉塞(へいそく)や呼吸筋のまひが起これば、人工呼吸器管理となってしまいます。

 保存食では、120度で4分以上加熱・加圧処理されているレトルトパウチの食品は常温保存が可能ですが、冷蔵保存が必要な真空パック食品は要注意です。これは120度4分以上加熱を加えておらず、食品内にボツリヌス菌芽胞が残存している可能性があります。必ず冷蔵保存して、期限内に食べます。

 過去には真空パックの食品でこのボツリヌス食中毒が起こりました。これはボツリヌス菌が酸素を嫌い、酸素が少ない環境下で増殖、毒素をつくるからです。

 自家製のいずし(乳酸発酵した食品)でのボツリヌス菌食中毒の事例は、魚に付着していたボツリヌス菌が発酵過程の酸素の少ない状況下で増殖、毒素をつくったものでした。

 ボツリヌス菌は増える時にくさい臭いのガスを出しますから、袋、缶、容器が膨らんだり、異臭がしたりするときは廃棄し、摂食は絶対に避けます。ボツリヌス菌にご注意ください。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。