県は2027年度に「とちぎメディア芸術祭(仮称)」の開催を目指す方針を固めた。本県の文化芸術分野にとって新たな挑戦となる。漫画やアニメーション、グラフィックスなどを包括するメディア芸術は、全国でも若い世代を中心に注目度が高い。新年度に議論を深め、本県独自の新機軸を目指してほしい。
メディア芸術を巡っては、県内に関係する大学や専門学校、高校はあるものの、発表の場や将来の仕事で生かせる場が少なく、人材の県外流出につながりかねない点などが指摘されていた。県が本年度実施したメディア芸術に関するアンケートでも、アニメやグラフィックデザインなどを手がける若年層の多くが、作品PRの機会や創作活動の充実などを求めている。
近県では、福島県が県内の若者を主な対象とした「福島デジタルアート」をインターネット上で実施。山梨県は2021年度から国内外問わず参加者を募る「やまなしメディア芸術アワード」を開いている。特に山梨ではアワード受賞者が国内外の主要な芸術賞に輝いたことにより、応募者や観覧者が年々増えるなど注目度が高まったという。
こうした状況を踏まえ、県は本年度、有識者による「とちぎメディア芸術推進検討会」を立ち上げ効果的な施策などを検討。ギャラリーやネット上で開く漫画・イラスト、動画、メディアアートの作品展や、クリエイターと企業のマッチング交流会などを想定したとちぎメディア芸術祭の開催を打ち出した。
県立美術館で昨夏開かれたデジタルファインアート展「親愛なる友フィンセント 動くゴッホ展」は歴代最多の来場者数を記録した。本県におけるメディア芸術の可能性を示しており、祭典はその試金石となるだろう。また鑑賞機会の充実だけでなく、クリエイターが県内で活躍するための道筋を提起した点も評価したい。
一方、芸術祭は本県文化振興の一翼を担うという点を忘れてはならない。コンテンツ産業の振興とバランスを図りつつ、県芸術祭との開催時期の連動や共通イベントなどで、県民の感性を刺激してほしい。県芸術祭との相乗効果に加え、先行する他県などを参考に伝統と革新の「化学変化」を引き起こすことができれば、全国的に注目される祭典となるに違いない。
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