江蔵智さん(左)と育ての母親チヨ子さん=2024年5月、東京都内(江蔵智さん提供)

 東京都立墨田産院(閉院)で1958年の出生直後、他の新生児と取り違えられた江蔵智さん(67)の実親調査が難航している。開始から半年以上が経過したが、該当者が見つからず、11月20日には江蔵さんの育ての母チヨ子さんが93歳で亡くなった。江蔵さんは「実子に会いたいという母の願いはかなえられなかった。残念だ」と話す。

 都は調査を命じた今年4月の東京地裁判決を受け、実親を探す作業を開始。江蔵さんと同時期に墨田区で生まれた人の情報が記録されている「戸籍受付帳」から、取り違えられた可能性がある人の絞り込みに着手した。都によると、江蔵さんが生まれた58年4月の1カ月間に出生届が出された230人のうち、これまでに男性が116人と判明した。

 対象者やその親に調査への協力を求める文書を送付。一部はDNA型鑑定に応じたものの、調査への対応は任意のため協力が得られない人や、文書を届けられていない人もいる。都と江蔵さん側は対象者の個人情報を保護する覚書を交わしており、江蔵さんの代理人弁護士は「安心して協力を」と訴える。