◎今週の一推しイベント
【27日(土)】
▽「つぐ mina perhonen」(~26年2月1日、世田谷区)
ことし設立30周年を迎えたファッションブランド「ミナ ペルホネン」の歩みと哲学をひもとく展覧会が、世田谷美術館で開催されている。
オリジナルの生地(テキスタイル)からデザインをすすめ、流行に左右されず長く着られる衣服づくりで知られる。創設者のデザイナー皆川明さんは「ファッションやアートを通して、社会をデザインするのが私たちの仕事。『つぐ』という言葉に、次世代への技術や創造力の継承と、“人々をつなげる”という思いを込めた」と語る。
会場には、30年の歩みを物語るテキスタイルとものづくりの背景を多数展示。中でも約180のテキスタイルが壁面を埋め尽くし、緩やかに共鳴し合うインスタレーション「chorus(コーラス)」は必見だ。「bird」「flower」「geometry(幾何学)」といったカテゴリーに分け、一つのデザインが次のアイデアへと進化し、受け継がれる様子を表現した。
顧客が長年愛用してきた思い出深い衣服を預かり、対話を重ね、希望に寄り添ってリメークを施したユニークな作品が並ぶ展示エリアも。服が単なる消耗品ではなく、使い手の人生と共に時を重ねる存在であることを伝えている。
繊細な原画や、工場での刺しゅう、織り、プリント制作の紹介映像からは、人の手による図案が一枚の布になるまでの工程が臨場感をもって浮かび上がる。皆川さんは「人間にしかできない創造を追求してきた。AI時代にこそ、手作業の価値は高まっている。効率化が進む世の中で、本当に大切にすべき“何か”を見つけてほしい」と話した。
○そのほかのお薦めイベント
【27日(土)】
▽「Strike Gold Art for “No Concept”―作為なき表現者たち」(~26年1月25日、渋谷区、入場無料)
既存のアート概念にとらわれない、障害者アーティストたちの純粋な表現に焦点を当てた展覧会が、表参道のジャイルギャラリーで開かれている。
同ギャラリーで2017年に始まり、5回目となる人気シリーズ展。アーティストたちが身体で感受した動植物との親和性を、素直に投影した色鮮やかな作品が並ぶ。
精神的困難を抱える京都の大場多知子さんが華やかな色で描いた「蓮と翡翠」は、花々の力強さが見る人を引きつける。パリのポンピドーセンターに作品が所蔵されている埼玉の知的障害者、斎藤裕一さんの抽象画も。ボールペンで幾重にも重ね書きされ、大好きな地元サッカーチーム「浦和レッズ」のロゴをほうふつさせる赤色などが印象的だ。
企画者の杉本志乃さんは、障害者の兄の豊かな感性に影響を受けて育った。「初開催時、日本で彼らの表現に芸術的価値を見いだす人は稀だった。25年は現代アートの最高峰、英国のターナー賞を学習障害のあるアーティストが受賞し、世界の潮流も大きく変わった」と話す。10年以上にわたり全国の施設を訪ね歩き、今も新たな才能を発掘し続けている。
▽「ムラーノガラス―あたたかなガラスと暮らす冬―」(~26年1月7日、中央区)
ベネチアガラスの研究者として知られる小瀧千佐子さんによるムラーノガラスの企画展を、銀座の和光本店地階アーツアンドカルチャーで開催している。
新作オブジェからビンテージの食器まで幅広い作品が並ぶ。注目は、1923年に設立され2018年に閉鎖された名門サリール工房で制作された希少な作品群だ。繊細なガラス彫刻の上から金彩を施した、モダンで独創的な花瓶やテーブルウエアなどを展開している。
ミニチュアガラス作家ビットリオ・コスタンティーニさんによる魚のオブジェも貴重。伝統技法と独創的な感性が融合した独自の色のガラスは、光の角度によって多彩な表情を見せる。
小瀧さんは「ベネチアでも職人が減っており、技術の継承は難しくなっている。手作りだからこそ放つガラスの温かさや美しさを、もっと日本でも知ってもらいたい」と話している。
【9日(金)】
▽「デジタルアーカイブ推進基本法は現場とアーカイブ支援をどう変えるか」(10時30分、千代田区、事前予約制)
日本におけるデジタル知識の基盤構築を目指す「デジタルアーカイブ学会」研究大会の企画セッションが、一橋講堂で行われる。
参院議員の赤松健さん(自民党)、衆院議員の笠浩史さん(立憲民主党)や法学者、図書館関係者らが登壇。デジタルアーカイブ推進基本法成立を目標として、AI時代に日本が世界に誇れる「デジタル情報の保存と発信」の形を議論する。
学術資料からアニメ・漫画まで、あらゆる分野の「信頼できる記録」をデジタル空間で共有し、誰もが使えるようにすることが、私たちの新たな創作や学びをどう豊かにするか、その意義を考える機会となる。
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