カラフルなパーカーのカップル。白いスカートの重ね着が似合う男性(左)=2021年10月

 切りっぱなしのパンツでそろえた肌見せコーディネート=2022年3月

 シアー素材を重ねた“見せパン”コーデの3人=2022年10月

 モノトーンでまとめ、おなかをチラ見せ=2025年3月

 ネルシャツとオーバーサイズのパンツを合わせたアメカジスタイル=2024年9月

 ショーツをファッション化した着こなし。グレーのニットに黒タイツで上品に=2023年9月

 カラフルなパーカーのカップル。白いスカートの重ね着が似合う男性(左)=2021年10月  切りっぱなしのパンツでそろえた肌見せコーディネート=2022年3月  シアー素材を重ねた“見せパン”コーデの3人=2022年10月  モノトーンでまとめ、おなかをチラ見せ=2025年3月  ネルシャツとオーバーサイズのパンツを合わせたアメカジスタイル=2024年9月  ショーツをファッション化した着こなし。グレーのニットに黒タイツで上品に=2023年9月

 こんにちは! シトウレイです。今日はコロナ以降の「女性像=トレンド」の変遷をお伝えします。ファッションは、いつの時代も世相を映す鏡。時間軸で振り返ると、社会の空気との関係がくっきり見えてきます。

 コロナ禍でショーはストップし、2020年9月のコレクションはデジタルが主流。時が止まったような状態から動き出すのは1年後。海外渡航者はほぼゼロ、がら空きの会場に現れた潮流が(1)ノーボーダー(境界の消失)(2)ボディーポジティブ(体の多様性の肯定)(3)露出の加速―です。

 「いつ死ぬかわからないなら、自分のために生きる」。そんな価値観が服に直結し、あらゆる人が「着たい服を着る」方向へ一気に解放されていきました。

 22年2月のウクライナ侵攻による政情不安で、この傾向が加速。男性がスカート姿でも「LGBTQ(性的少数者)なの?」というような視線は消え、ただ「その人のスタイル」として受け止められる時代に。その一方で「女性性の強調」が顕著になっていきます。

 そして爆発した“見せパン”ブーム! 「ミュウミュウ」がショーツを大人のモードとして再構築し、一気にムーブメントになりました。腰上のチラ見せ程度から半年後には“全見せ”に。同時期に広がったのが、透け感(シアー)のあるアイテムです。23年春にはボトムスにも拡大。パンツの上に薄いシアー素材を重ねるスタイルが広く一般化しました。

 さらに翌シーズン以降、ショーツがファッション化。隠すべきものからアップデートされます。実はこの数年前から“見せブラ文化”という布石がありました。ブラジャーが見えてOKに変わったように、ショーツも「性的な目線で見られる対象」から外れたのです。

 24年秋、意外な揺り戻しが訪れます。「色気・女らしさ」「抜け感・ニュアンス」から離れた結果のアメカジトレンドです。アメカジといえば性差もなく、盛らず、整え過ぎもない、ほぼ作業着。そんなリセットポイントを経た25年には(1)知性(2)品(3)エレガンス―と、余白を持ち、成熟した「できる女性像」へ変化。コロナ以降のファッションが「私」から「公」へシフトした転換点とも言えます。

 振り返ると、20~24年は性(ジェンダー)にまつわる深い探求=「私」の探求でした。自分の性、内面、自分本位の喜び。アイデンティティーの深掘りをやり尽くし、24年秋以降は「公」における私へ。例えば、職場で、親として、さまざまな社会的な役割としての私をファッションでどう表現するか。今後の変化が気になります。それでは、また次回お会いしましょう!(ストリートスタイルフォトグラファー、写真も)

 シトウ・レイ 石川県生まれ。早稲田大卒。雑誌で活動し始め、日本を代表するストリートスタイルフォトグラファーに。メディアで幅広く活動する他、ユーチューブで最新のファッション事情をリポートしている。