東京都港区と渋谷区にわたる「表参道」は明治神宮へ向かう道のことだが、同時に周辺一帯のおしゃれなエリアを指すことも多い。洗練された街中にある、ケヤキ並木の参道を歩き始めた。
表参道交差点に立ち西側を見ると、目の前を走る通りと巨大な石灯籠が目に入る。その存在でここが参道だと分かるが、広い通りの両側には高級ブランド店が軒を並べる。道沿いに鎮座する秋葉神社の社殿の後ろから、ファッショナブルな時計の壁面広告が顔を出すのは、いかにもこの街らしい光景だ。
交差点を背にして右側の歩道を進む。すっきりとしたファサード(正面部)が250メートルに渡って続く文化商業施設「表参道ヒルズ」は2006年、旧同潤会青山アパートの跡地に誕生した。関東大震災の復興事業として建築されたこのアパートは今はないが、一部を再現した「同潤館」が建てられ、画廊などが入居する。
さらに歩き続けると、若者に人気の「キャットストリート」(旧渋谷川遊歩道)との合流点付近で、「参道橋」と書かれた石柱に出合った。説明板によると、現在商店が並んでいる辺りはかつての川筋で、明治期まで水車による精米が盛んだった。
流行の先端を行く街の所々で歴史の面影に触れ、しばし感慨にふけった。一休みして道を引き返し、青山通りを渡って東へ直進する。この辺りも、日本のファッションブランド、コムデギャルソンなど有名店が多く、落ち着いた雰囲気が漂う。近くには根津美術館や岡本太郎記念館などがあり、アートを楽しむのにも好適だ。
最後に青山通り沿いの複合文化施設「スパイラル」に立ち寄った。1985年に開館したアートや舞台芸術の発信地だ。入り口脇には、幕末、幕府の外交政策を批判して弾圧され、自害した蘭学者高野長英の隠れ家跡を示す碑がある。
【メモ】表参道は1945年5月の「山の手空襲」で一度、焼け野原になった。
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