県は2026年度から5年間にわたる次期「とちぎ森林創生ビジョン」を策定する。素案では「林業・木材産業の成長産業化」と「森林の公益的機能の高度発揮」を2本柱とした。「稼げる林業」の実現を目指す現ビジョンを継承し、経済型林業・木材産業の推進を掲げる。
本県は戦後の拡大造林により植栽されたスギやヒノキなどの人工林が成熟し、約8割が利用期を迎えている。優良な素材を生かし、一層成長が目指せるビジョンとしたい。
そのためには、丸太などの素材の生産力や県産木材製品の競争力強化は不可欠だ。住宅以外の新たな需要の開拓も求められる。生産から加工、流通など、産業の川上から川下まで優良企業がそろう優位性を生かし、各分野の連携をこれまで以上に強化すればさらなる成長が期待できる。
素案は10年後の35年度までを展望し、数値目標を示した。23年度実績が114億円の林業産出額は、30年度に131億円、35年度に155億円とした。公益的機能の高度発揮では、造林・間伐面積を24年度の3644ヘクタールから30年度4020ヘクタール、35年度4250ヘクタールに増やす。
目標の実現に向け、素材生産力の強化では、分散した森林の集約化、伐採方法や森を育てる造林保育の改革などに取り組む。森林の集約化は作業の効率化を図れるほか、生産性向上につながる。本年度まで5年かけて取り組んできた航空レーザー測量により、森林資源のデジタル化が完了した。データを有効活用し、効率的な生産を実現したい。
伐採方法は「皆伐」と「間伐」だけでなく、森林の若返りを同時に行う強度間伐も状況に応じて取り入れるべきだ。労力が求められる造林保育には、ドローンの活用などでスマート化を促進させ省力化に努める必要がある。
県産木材製品の競争力強化には、製材工場の大型化や高付加価値化などが欠かせない。日本農林規格(JAS)認定製材品の生産体制強化も必要だろう。新たな用途や販路開拓は需要拡大に直結する。コンビニやスーパーなど店舗の木材化など非住宅分野への進出も図りたい。
利用期を迎えた森林資源の活用やそれに伴う森林の若返りは、地球温暖化防止への貢献なども期待できる。健全な森づくりにより、公益的機能の発揮につなげてほしい。
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