竹井漣洲「花卉図」(縦109・5センチ、横55・0センチの部分、1899年、個人蔵)

 「風化」という言葉がある。これは長い時間がたって、次第に人々の記憶から物事が忘れ去られてゆくことをいう。竹井漣洲(たけいれんしゅう)は、そうした絵師の一人だった。

 近年、市民からの依頼を受け、その家に伝わる文化財の調査に入ると「漣洲」と署名された掛け軸やびょうぶ絵を見かけるようになった。所蔵者に伺っても誰なのか分からない。「漣洲」とは何者か。それがこの展覧会の出発点である。