晩秋の那須野路を舞台に市内外のランナーが健脚を競う大田原マラソンが今年、35回の節目を迎えた。県内唯一の日本陸上競技連盟公認フルマラソン大会として、その存在価値は高いと言える。自己記録に挑むランナーのほか、地域スポーツの振興や地域活性化などのために、今後も改善を重ねるなどして開催を継続してほしい。

 大田原マラソンは1988年に始まった。休止した期間もあるが、4時間という厳しい制限時間を設けた競技性の高い市民大会として広く知られている。

 例年通り11月23日の勤労感謝の日に開かれた今年の大会には、10キロの部も含め3897人がエントリーした。45都道府県から申し込みがあり、前年を約千人上回った。

 3連休の中日だったこともあるが、ランナーの声が増加の背景にあったとみられる。ランニングポータルサイト「RUNNET(ランネット)」には駐車場やトイレ、シャトルバスなどスムーズな運営を評価する意見が寄せられていた。「ランナーファースト」の姿勢を貫き、引き続き強みとしてアピールすべきだ。

 大会を続けるのは容易ではない。芳賀郡市1市4町を舞台にしたフルマラソン大会「はが路ふれあいマラソン」は昨年12月の11回大会で幕を閉じた。参加者の減少や人手不足などが理由だったという。

 大田原マラソンも定員(前回はマラソン3500人、今回3千人)に達しない年が目立つのが実情だ。大会を支える競技役員らスタッフ不足を懸念する声もある。安定した運営にスタッフは欠かせない。人材確保に向け、議論を深めるべきだろう。

 今大会では参加者を増やそうと、4~10人でチームを組み、上位4人の合計タイムを競い合う「チーム戦」を新たに導入。制限時間内の完走者に贈る市産材の木製メダルも用意した。前回大会からは「おもてなし広場」を展開し、市の特産品などのPRにもより力を入れている。

 県によると、自治体主催のフルマラソン大会は本県では大田原マラソンのみである。ランナーに限らず、マラソンという競技に県内で接する貴重な機会と言える。茨城など近隣県でも大会は催されており、ライバルは少なくない。今後も試行錯誤を重ね、「選ばれる大会」を目指し続けてほしい。