自営農業を主な仕事とする県内の「基幹的農業従事者」が25年間で半減した。人口減少をはるかに上回る速さで減少しており、食料自給率にも影響を及ぼしかねない。
高齢者が離農・廃業する前に、第三者を含む後継者へ農業経営を引き継げるよう、多様な担い手を育成しながら、継承支援を強化しなければならない。県や市町、農業団体の総力を結集してほしい。
農林水産省の2025年農林業センサスによると、25年の県内の基幹的農業従事者は速報値で3万3552人。5年前の4万2914人から21・8%減、00年の6万8013人と比べ50・7%の減少となった。
全国では約102万人となり、10年の205万人からほぼ半減した。国は今後20年間で現在の4分の1にまで減少すると予測しており、県も同様に分析する。
背景には燃料や肥料など資材価格の高騰や、猛暑下での作業の厳しさなどから、高齢者を中心に離農や廃業が加速したとの見方がある。今後は大規模な農業法人や中小規模の経営体が、担い手の受け皿となることが予想される。
県は次期県農業振興計画(26~30年度)の素案で「農業やるなら栃木県」を合言葉に、担い手の呼び込みを図る方針を盛り込んだ。直近5年間で1740人だった新規就農者数を、次の5年間で2500人に増やす目標を掲げる。
実現には現行の就農支援や技術指導に加えて、働きやすい就農環境の整備が求められる。一つの形態として農業法人が就農者を雇用し、他産業並みの休日の確保や福利厚生、昇給昇格などの労働条件を整えることが有効とされる。そのためにも、農業経営の法人化を進めるべきだろう。
高齢者が離農や廃業を決める前に、継承に向けた相談支援を積極的に行うことも重要だ。後継者が不在でも親族以外の第三者に引き継げるよう、専用の窓口を設けるなどして新規就農者と橋渡しする仕組みを確立してはどうか。
新規参入のハードルを下げるため、農地や大型農機具を貸し出す制度を求める声もある。農家の負担を軽減するため、草刈りや農薬散布などの作業を担う事業体の育成も課題となる。就農意欲をより高めるには、生産性や収益力の向上が必要だ。持続可能な農業を維持するには、地域の協力も欠かせない。
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