介護職員を目指す職業訓練。受刑者は質問しながら真剣に取り組む=2015年2月3日午前(画像は一部加工しています)

 

 国内最大の女子刑務所「栃木刑務所」(栃木市惣社町)が2028年4月に廃止される見通しとなった。今から10年前の2015年、下野新聞は記者が塀の中を取材したルポ企画「更生へ…償いの道 栃木・女子刑務所の現状」(全6回)を報道しました。受刑者の高齢化や国際化、再犯の増加など多様化する問題に迫った記事を通じて、栃木刑務所の役割を振り返ります。

 ベッドを見詰める表情は真剣そのもの。言葉には緊張がにじみ出る。

 「これからお着替えしますね。肩を引いてもらってもいいですか」

 栃木刑務所の介護職員初任者研修課程。受講するのは6人の受刑者だ。2月上旬の授業では、右腕が麻痺(まひ)した高齢者のパジャマを脱がす練習を繰り返した。介護される側も受刑者が務める。

 「ノートを取っていいですか?」。受刑者が自らメモを願い出た。静寂な作業場と異なり、積極的な姿勢が目に付く。

 作業専門官は「出所後は他者とのコミュニケーションが重要なので、自発的に声を出してもらうよう指導している」と説明する。受け身の刑務作業と、能動的な職業訓練。この差が出所後の自立に重要という。