県は2026年度から5年間の観光施策の方向性を示す「とちぎ観光立県戦略(仮称)」の素案をまとめた。本県の観光産業の「稼ぐ力」を強化し、持続可能な観光地として発展していくために現状と課題、処方箋である基本戦略を提示したものである。

 新型コロナ禍で大きく落ち込んだ本県の観光需要は、急速に回復している。24年の観光客入り込み数はコロナ禍前の9割程度にまで回復し、宿泊数はそれを上回った。観光消費額は過去最高を記録している。

 しかし長年の課題は残されたままだ。日帰り客の多さである。特に外国人に顕著である。現状分析は多角的に行われているが、その対策は新鮮味がなく弱いと言わざるを得ない。日帰り外国人の対策強化が求められる。

 外国人の宿泊数は24年度に約27万9千人で過去最多となった。しかし日本人を含む宿泊数全体に占める割合は3%ほどに過ぎない。市町別では日光市が全体の約6割を占める。月別では紅葉時期の10、11月に多い傾向にあるが、日本人ほど繁閑の差が大きくないのが特徴だ。

 全国と比較すると、本県の訪日外国人対策が弱いことが一目瞭然となる。都道府県別で24年の日本人宿泊数は延べ1120万人で、京都、福岡、兵庫に次いで13位だった。これに対し外国人宿泊数は延べ48万人で26位。地方部平均130万人を大きく下回る。消費額、消費単価も地方部平均を下回っている。

 本県を訪れる外国人は、多くが東京滞在型の日帰りである。行き先は日光へ集中しており、県内周遊や宿泊につながっていない。20~30代が6割以上。訪問手配は個人手配が8割弱、その手段はウエブサイト経由が8割強である。本県への訪問は、日本到着後に決めた割合が25%に上るというデータもある。

 若い世代の共感を呼び、本県に泊まりたくなるようなネット対策とプロモーションが必要だ。素案では「海外誘客拠点や外国人材による外国人目線の情報発信」を行うとしている。具体策がほしい。

 宿泊施設への改善要望としては「外国語でのコミュニケーション」が75%と圧倒的に多かった。こうしたことがネットですぐに広まる時代である。宿泊施設側も外国人材を雇用するなどして、積極的に多言語化を進めたい。