性や妊娠に関する正しい知識を広め、健康管理を促す「プレコンセプションケアセンターとちぎ」(愛称プレコンとちぎ)が始動した。県が県助産師会に委託し、学校や企業が実施する若者向けセミナーへの講師派遣や、県民向けの相談支援を無料で行う。
妊娠・出産は女性だけの問題ではなく、父親となる男性側の理解や協力も不可欠だ。性別に関係なく、若者が早い段階から将来の人生設計について、具体的に考えるきっかけになるだろう。
若ければ若いほど将来を見通すのは難しい。正しい知識を踏まえた上で、恋愛、結婚、仕事、子育てなど、人生の重要な局面で最善の選択ができるよう、企業や学校はセンターの講師派遣を積極的に活用してほしい。
併せて「性と生殖に関する健康と権利」について十分、理解を広める必要もある。自分の体に関することを自分自身で決めることのできる権利であり、結婚や妊娠、出産についても当事者の意思が尊重されなければならない。
コンセプションは「妊娠・受胎」を意味し、プレコンセプションケアは妊娠前のケアを意味する。国は「妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う」という考えの下、推進している。
センターの取り組みによって期待されるのは、子どもを望む人や、その可能性がある人が、正しい知識を得て妊娠・出産に備えられることだ。
一般的に年齢が進むと妊娠率は低下する。35歳以上になると、合併症や流産のリスクが高くなるといわれる。不妊治療を受ける人の中には、そうしたことを知らずにいたという人も少なくない。また低出生体重児の原因となる痩(や)せ気味の女性も増加傾向にある。
子どもを望んでもかなわないこともある。不妊の原因は男性にも女性にもありうる。適切な情報を適切なタイミングで得ることは重要だろう。
一方、出産への圧力が強まりかねないとの懸念もある。プレコンセプションケアは、国や県が少子化対策の一環に位置付けて予算化しているが、あくまで子どもを望む人への支援である。「性と生殖に関する健康と権利」が前提にあることを、忘れてはならない。若者だけでなく、親世代にも周知啓発が進むよう、工夫が求められる。
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