共同通信社は1日、生成人工知能(AI)検索サービスを展開する米新興企業パープレキシティに対し、配信記事を無断で利用し著作権を侵害しているとして、即時利用停止を求める抗議書を送付した。産経新聞社と毎日新聞社も1日に同様の抗議書を送った。共同通信に加盟する48社も連名で抗議声明を発表した。
パープレキシティを巡っては、読売新聞の東京、大阪、西部の3本社が8月、損害賠償を求めて提訴。朝日新聞社と日本経済新聞社も同様の訴訟を起こした。国内の主要新聞・通信各社が抗議する姿勢を鮮明にすることで、パープレキシティに適正な対応を求める。
共同通信は抗議書で、パープレキシティが2024年8月からの約1年間、共同通信や加盟新聞社の記事が掲載されるニュースサイト「47NEWS」に計数十万回アクセスしたことを確認したと指摘。許諾なしに記事を収集・複製し、回答生成に利用して著作権を侵害したと説明した。
また、回答の参照元として共同通信の記事を表示しながら、記事の内容と異なる虚偽情報を回答として示し、共同通信のニュースコンテンツの信頼・ブランド価値を毀損したとしている。
共同通信はパープレキシティに対し、損害賠償のほか、取得した記事やそれを用いた回答、収集に使ったソフトウエア情報、収集方法の開示を求めている。要求が聞き入れられない場合、法的措置を取るとしている。
パープレキシティはAIを用いた対話型検索サービスを提供している。サイトの一覧を示す従来の検索サービスと違い、著作権侵害の懸念が強いとされる。
共同通信とパープレキシティは、過去に記事の対価を巡って交渉していた時期があったが、パープレキシティは24年11月に交渉に応じなくなった。
共同通信社の話 報道機関の記事は、いずれも膨大な労力をかけ取材・編集されたものであり、その収益は公正な報道を継続する基盤です。AI企業が無許諾で記事を利活用することはこの基盤を破壊するものであり到底容認できません。今回3社でパープレキシティ社に抗議し、加盟新聞社の声明も発表したことで、読売・朝日・日経と併せてAI企業の記事フリーライド(ただ乗り)に抗議する国内の主要メディアの足並みがそろったと考えます。報道機関の活動基盤を守るため、今後とも断固とした姿勢を取っていく所存です。
産経新聞社広報部の話 当社が労力と費用を投じて作成したコンテンツの無断利用、および無断利用のうえ当社の信用を毀損する形で表示する行為は到底容認することはできません。今回の抗議を通じ、パープレキシティ社に不法行為の即時停止とコンテンツの適正利用を強く促すとともに、生成AI事業者による、報道機関全体の機能を破壊しかねない極めて深刻な権利侵害を食い止めたいと考えています。
毎日新聞社社長室広報ユニットの話 生成AI事業者による相次ぐ違法行為は、当社のみならず日本新聞協会が業界全体の深刻な課題として警鐘を鳴らしてきました。記者たちが膨大な時間と労力をかけて取材・編集した記事に対する著作権侵害は断じて容認できません。一連の違法行為を放置すれば、事実を正確に報じることを使命とする報道機関への信頼と経済的基盤が破壊されてしまいます。違法行為を繰り返す事業者には速やかな対応を求めるとともに、報道機関の役割や生成AIを巡るルールのあり方について引き続き訴えていきます。
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