ツツガムシはダニの一種で草むらなどに生息しています。そして、一生涯に1度だけ、卵からかえった幼虫の時に哺乳類に取りついて、その体液を吸います。

 

 そのツツガムシの中の0・1~3%が、つつが虫病を起こす細菌の一種の「つつが虫病リケッチア」をもっている“有毒ダニ”です。人が草むらや野山に立ち入って、この有毒ダニのツツガムシにかまれると「つつが虫病」にかかります。春から初夏、秋から初冬と二つのつつが虫病の発生のピークがあります。

 潜伏期間は5~14日と長く、だるい、食欲不振から頭痛、悪寒、高熱などひどい風邪のような症状が出ます。3日目から4日目くらいから胸から背中、おなか、顔などにかけて赤褐色の不定形の2~3ミリの発疹が現れます。テトラサイクリンなどの抗菌薬が有効で、初期の段階に速やかに適切な治療が施されると劇的に症状が改善します。しかし、治療が遅れる、適切な抗菌薬の投薬がない場合には、重症化や死亡例もあります。

 ツツガムシの幼虫は動物の呼気に出てくる二酸化炭素に反応して土の上に出てきて待っています。そこに人がやってきて、地面に腰をおろしたりすると衣類の隙間から入り込み、皮膚にクチバシを突き刺して吸い付き、体液(血液ではない)を吸います。このときにつつが虫病リケッチアが、人の体内に侵入するのです。

 ツツガムシは非常に小さく、眼で見つけることは難しいです。感染防止のポイントは吸着される前に洗い流すことで、野山や田畑から帰ったらすぐに入浴して体を洗い流し、衣類も洗濯機に入れて洗濯しましょう。

 テトラサイクリンの抗菌薬が普及する前、つつが虫病は大変に恐れられた病でした。無病息災のことを「恙(つつが)ない」と言いますが、聖徳太子が小野妹子を遣隋使として派遣した際に託した手紙の中に「恙なきや」という文言がありましたね。当時から、つつが虫病が恐れられていたということでしょう。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。