◎今週の一推しイベント
【14日(金)】
▽「ANDY WARHOL―SERIAL PORTRAITS」(~26年2月15日、渋谷区・エスパス ルイ・ヴィトン東京、入場無料)
米国のポップアートを代表する巨匠アンディ・ウォーホルが生涯にわたり追求したポートレート作品に焦点を当てた展覧会が、表参道で開かれている。
消費社会をテーマにしたシルクスクリーン版画や、著名人のポートレートを得意としたことで知られる。物理学者アインシュタイン、舞台俳優サラ・ベルナール、小説家フランツ・カフカらの顔を10枚の版画にした大作「20世紀のユダヤ人10人の肖像」は、複数の色インクによるグラデーション効果で、セレブリティーたちの豊かな表情を浮き彫りにした。
さまざまなポーズで撮ったセルフポートレートの数々も展示。ウィッグを着けたり、ネクタイでフォーマルな雰囲気を出したりと多彩なキャラクターを演じている。「誰もが15分以内に有名人になれる、そんな時代が来るだろう」と予言した通り、今やネットに“自撮り”画像があふれるSNS全盛の世界だ。
ウォーホル自身がドラァグクイーンに扮した女装姿のインスタント写真も。1980年代にはニューヨークですらひどい差別の対象だった性的マイノリティーらへの共感が見え隠れする。
有名になる直前の60年代前半、街角の証明写真機で撮影した自身を、シルクスクリーンで転写したセルフポートレートは印象的だ。サングラスをかけ右手でポーズを作った表情からは、名声を求めつつ、自分を冷静に観察していた姿が伝わってくる。
約20年後に写真家ロバート・メイプルソープが撮った晩年の素顔に、自身とメディアがつくり出してきた虚像を剥がした表情が浮かぶ。その無防備な口元から「美しくない人なんて出会ったことがない」というウォーホルの名言が聞こえてきそうだ。
○そのほかのお薦めイベント
【14日(金)】
▽「Every day is a new beginning」(14~16日、千代田区)
メード・イン・ジャパンにこだわり、“道具としてのカバン”を作り続けてきた「吉田カバン」の創業90周年を記念する3日間の展覧会が、九段ハウスで行われる。
創業者の吉田吉蔵に関連する貴重なアーカイブ品は見どころだ。黒沢明監督の映画「天国と地獄」のために作られたバッグのほか、得意とした馬蹄形のコインケースやトランクケースなどが並ぶ。吉田の娘で革手縫い職人の野谷久仁子さんによるバッグ作りの実演では、受け継いだ職人技を間近で見られる。
メーカーが展開する各ブランドの商品も紹介。その一つ「ポーター」は、人気のバッグシリーズ「タンカー」を紹介。トウモロコシとヒマを原料にした100%植物由来のナイロン素材の商品や、新素材を用いたバッグも展示する。
赤バッテンのタグで知られる「ラゲッジレーベル」からは、「トゥルーブルー」や柿渋染めを用いた「オールドニュー」シリーズの新作バッグが登場する。
▽「OMOTESANDO HILLS CHRISTMAS TREE 2025」(~12月25日、渋谷区)
冬の風物詩になっている斬新なデザインのクリスマスツリーが、表参道ヒルズで観賞できる。
今年は、国内外で活躍するデザイナー松尾高弘さんが手がけた高さ約10メートルのツリーを本館吹き抜けに設置。独自に開発した約千個のプリズムで構成されたツリーが、虹色にきらめく光景をつくりだす。
【21日(金)】
▽「SHIBUYA PARCO 6th Anniversary」(~24日、渋谷区)
店舗の大型リニューアルから6周年を迎えた渋谷パルコの館内外で、音楽・ファッション・アートなどの多彩なイベントが4日間にわたり開催される。
1970年代から優れた広告ポスターを生み出してきた同店は、本企画のキービジュアルをファッションブランド「UNDERCOVER」のデザイナー高橋盾さんに依頼。自身の油絵作品を選んだ高橋さんは「私の特異な世界観がパルコの歴史と未来に合うのではないかと思った。これからも日本発のカルチャー発信地として君臨してほしい」と話す。
初日の21日夜は、スペイン坂前広場で音楽イベントを開催、館内ではDJイベントや、音楽をクラフトビールと楽しむ「醸音祭」も催す。
2019年の建て替え開業以来、「グローバルニッチ」をキーワードとし、アジアや欧州の新たなブランドの発信を続ける渋谷パルコならではのポップアップショップも登場。ドイツ発のユニセックスブランド「POLYPLOID」(~30日)や、韓国の民族衣装から着想を得た美しいデザインで知られるオートクチュールブランド「KIMH☆(マクロン付きE)KIM」(~12月3日)などを紹介する。
平松有吾店長は「70年代の創業時から掲げていた“唯一無二”を提供する精神を体感してほしい」と話した。
関連して同店4階の「PARCO MUSEUM TOKYO」でフランス人アーティスト、ジャン・ジュリアンさんの個展(14日~12月1日)も。日本の日常風景などをやさしいタッチで描いた新作ペインティング19点を展示する。
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