2026年度前期NHK連続テレビ小説「風、薫る」の放送を契機に、本県の魅力を全国へ発信するための動きが本格化している。日本近代看護の先駆者とされ、主人公のモチーフとなる大関和(おおぜきちか)の出身地大田原市は10月、和をイメージしたキャラクターなどを決定した。朝ドラを最大限生かして施策を展開し、地域振興へ確実につなげてほしい。

 今年1月の「風、薫る」発表を受け、市は庁内にプロジェクトチームを立ち上げ、朝ドラを契機とした地域活性化策などを検討。当時放送中だった「あんぱん」でゆかりの高知県や、和が勤めた病院のある新潟県を訪問するなどして準備を加速させた。

 取り組みをPRするためのキャラクターとロゴマーク・キャッチフレーズを10月に発表。いずれもデザインを公募し決定した。キャラクターは緑の服に前掛け姿で、頭のリボンと腰のひもには黒羽藩ゆかりの組みひもを再現した地域ブランド「大関組紐(くみひも)」を取り入れている。ロゴマーク・キャッチフレーズは「風光るまち大田原」。

 市は広報物やノベルティなどに使用するほか、民間活用を促すとしている。さまざまな商品や場面で目に留まれば、効果的なPRになるだろう。広く浸透させるには民間の協力は必須で、取り組みの周知が求められる。

 商工や観光など関係団体との連携も市は進めている。9月に市役所で関係団体連絡会議を開催した。産業振興の強化や地域活性化を目指し、取り組みの基本方針などを説明した。和に関する散策ルートの構築や飲食メニューの充実など具体的な例も紹介し、想定する実施主体も示した。

 市を挙げて盛り上げていくには、協力体制が必要不可欠と言える。各団体がそれぞれ独自に事業を展開すれば、重複して無駄な動きになる恐れもある。効率的に事業を推進するため、今後も小まめな情報共有を図っていくべきだ。

 近隣の那須塩原市、那須町も「風、薫る」の放送を前向きに受け止め、観光誘客などに期待を寄せる。朝ドラゆかりの地を訪れる人々をおもてなしするには、那須地域の連携も欠かせない。どのように周遊を促すのかなど検討課題はあるだろう。引き続き大田原市が旗振り役となって機運醸成を図り、朝ドラ効果を市内全域、そして那須地域へと波及させてほしい。