企画展の目玉の一つ「夔神神像」

長い鼻や大きさが目を引く大天狗面

企画展の目玉の一つ「夔神神像」 長い鼻や大きさが目を引く大天狗面

 日常生活にあふれる色や形。先人たちは身近な道具として自然のものをうまく活用した一方、行事や儀式のときには「特別な色や形」を用いていた。その実態に迫る企画展「“異”常の色・形 時に思いが宿るもの」が栃木県立博物館で開かれている。24日まで。

 「色」「形」「超える」の3章で構成。県内外に残る衣類や絵馬、奉納物など約350点を紹介し、人々の考え方や世界観などを読み取る。

 「超える」ゾーンには数の変化や大型化によって強い願いを象徴する資料が並ぶ。企画展の目玉の一つ「夔神(きのかみ)神像」は山梨県笛吹市の山梨岡神社に祭られている一本足の木像だ。同県外で展示されるのは初めて。

 夔(き)は古代中国の地理書に登場する異形の獣で、同神社には雷よけや魔よけの神として祭られている。江戸時代中期の儒学者荻生徂徠(おぎゅうそらい)が、神像の姿を書物に記した。一本足で直立する様はどことなく愛らしい。来場者たちは物珍しそうに像を見つめたり、写真に収めたりしていた。

 光丸山法輪寺(大田原市)の大天狗(てんぐ)面や、太平寺(那須烏山市)の大わらじなど県内にも特徴的なものが残る。

 「色」ゾーンでは赤、白、黒に着目。赤は「魔のもの」や「魔よけ」、白は「清浄・神聖」、黒は「尊さや高貴さ」などを表現していた。黒に負のイメージを持つ西洋の影響で日本でも明治時代以降、弔事の印象が定着した。昭和時代、50年ほど真岡市で使用されていた白い霊きゅう車は現代との違いが鮮明だ。

 「形」ゾーンは丸や輪、三角、二股に焦点を当てる。玉や円は神に近い物事、三角は魔よけ、二股は希少性などを示す。けがや病気を治したい体の一部に似た形の石などを奉納する見立ても願い事の一例だ。

 民俗担当学芸員の宮田妙子(みやたたえこ)さんは「私たちの根底にある感覚を見つめ直し、色や形に込められた意味合いを考えてもらえたら」と話した。

 16日午後1時半から宮田さんによる「学芸員とっておき講座」が開かれる。観覧料一般260円、大学・高校生120円、中学生以下無料。(問)同館028・634・1311。