認知症の人とその家族を、地域住民らが継続的に支援する「チームオレンジ」の活動が県内全域に広がっている。認知症になっても、住み慣れた地域で暮らし続ける環境整備の要となる。地域全体で認知症への理解を一層深め、持続可能な活動につなげたい。

 チームオレンジは認知症当事者らのニーズに合わせ、見守りや声かけ、話し相手、外出支援、訪問、必要な窓口の紹介などをできる範囲で行う。認知症の人への接し方などを学んだ「認知症サポーター」を中心に構成する。立ち上げや運営は、市町のコーディネーターが支援する。

 国が推進する認知症施策の一つに位置付けられている。本紙の取材によると、県内は2020年度以降、今年8月末までに市貝、高根沢の2町を除く23市町で計57団体が発足した。その後、高根沢町で1団体が始動した。

 活動形態は自治体や地域によって異なる。新たな団体として結成される場合や、介護事業所や高齢者サロン、認知症カフェなど、既存の組織が母体となる場合もある。

 ただメンバー全体が高齢化しており、市町によっては人材確保が難しいという声もある。活動を維持するには、認知症に関する知識と理解を地域全体に浸透させ、協力者を増やすことが鍵となる。

 認知症サポーター養成講座は90分程度で、県内では昨年度1万人以上が受講したという。職場でも受講できるよう、県や市町は企業などに積極的に働きかけるべきだ。中心メンバーの要件の一つとなるステップアップ講座を受けやすくする工夫も必要だろう。

 認知症の当事者や家族をチームの一員とすることも求められる。当事者は決して支援されるだけの存在ではない。進んで参加してもらえるよう、本人の意向を尊重し、それぞれのメンバーが対等な関係を築くことが大切だ。

 小山市内には県内最多の計18チームがあり、地域ごとにきめ細かな活動を展開している。地元の交番やスーパーにチームの活動内容や連絡先を周知し、認知症が疑われるような人を発見した場合に連携して対応する仕組みを整えている例もある。こうした取り組みについて、全県で情報交換する機会も有効だろう。

 認知症は特別な病気ではなく、誰もがなる可能性がある。自分のこととして、お互いに支え合う意識を持ちたい。