4日投開票の自民党総裁選では、昨年に続いて2度目の挑戦となった茂木敏充(もてぎとしみつ)前幹事長(70)=衆院栃木5区=が候補者5人のうち最下位に終わった。政府や党の要職を担い、実務能力は党内屈指とされながらも、支持に広がりを欠いた。9人中6位だった前回選に続き、厳しい結果となった。
一方、決選投票では旧茂木派の議員らが高市早苗(たかいちさなえ)前経済安全保障担当相(64)に結束して投票し、勝利に貢献したとされる。高市氏が首相に就任した場合、茂木氏は重要閣僚の外相に起用されるとみられ、党内の影響力は保持する見通しだ。新ポストでの活躍も注目されるが、総裁選で訴えた「党の再生」「慣例からの脱却」などの数々を党の重鎮の一人として実行する責任があるだろう。
今回の総裁選では高市氏や小泉進次郎(こいずみしんじろう)農相(44)ら有力候補に比べ、勝算は厳しいとの見方もあった。それでも出馬したのは、かつての派閥領袖(りょうしゅう)として「求心力を保つため」(自民関係者)ともみられている。
幹事長の立場で出馬した前回選から一転、今回は無役で挑み、一番乗りで出馬会見を行った。「立場上、思い切った発言ができず、発信力が弱かった」。前回選の敗因をそう分析。この1年でユーチューブチャンネルなどを開設し、メディアへの露出を強化してきた。
一方で「変われ自民党」をキャッチフレーズに行われた総裁選では「刷新感」が欠けた。党内融和が重視される中で激しい議論も見られず、「政界きっての政策通」ともされる茂木氏の存在感をアピールできる場面は少なかった。
議員票は34票(前回比同数)、党員・党友票も15票(同2票増)にとどまった。議員票では派閥会長就任時に参院議員との関係が悪化したことなどから、参院を中心に伸び悩んだともされている。
決選投票では気脈を通じる麻生太郎(あそうたろう)党最高顧問と共に、高市氏の勝利に貢献。ただ、こうした動きなども含め、派閥や長老らが幅を利かす旧態依然の印象も残った。「解党的出直し」が迫られる中、茂木氏が訴えた党再生や世代交代のビジョンに希望を抱いた党員も少なくなかっただろう。茂木氏には新ポストでの手腕発揮とともに、選挙戦を通じた訴えの実行を期待したい。