シトウレイです、こんにちは! 今回は、パリのオートクチュールコレクションから見えた流れをご紹介します。オートクチュール(高級注文服)とは、量産ではなくオンリーワン、一点物を発表する場所。プレタポルテ(既製服)の市場ではビジネスとして成立しにくい、ぜいたくなクリエーションに挑む実験場とも言えます。
豪華な生地&一点物の素材をふんだんに用い、熟練の職人による刺しゅうや細工がこれでもか!と施された究極の1枚が並ぶ最高峰。「ファッションはアートであると同時にビジネスでもある」と言われますが、アート寄りがクチュールです。
(1)豪華絢爛なドレス系(2)実験的なクリエーション系(3)サステナブル・クチュール―という3種の流れに大別できます。ここ数年で急増した(3)は、新しい生地や素材ではなく、今ある物を有効活用するのが特徴です。
例えば、デッドストックの生地や廃材の再利用。当然、素材の数に限りがあって、一定の商品数が必要なプレタには向かない。それらが「一点物」のフィールドで輝くと気付き、クチュールへ移るデザイナーが増えたんです。若い世代が新しい風を吹き込み、旧態依然としていた業界に新しい客層と価値観をもたらし、業界全体に気持ちいい風が吹いています。実際、(3)のブランドは客層も若くてフレッシュな人たちが多かった!
では、会場周辺のファッションは、どんな兆候があったか。特筆すべきは、メンズのアクセサリーの過剰具合。ネックレスやブレスレットなどをジャラジャラさせた男性が目立った! 大人ムッシュも主張強めのアクセサリーをチョイスしているのが印象的でした。
中でも注目は、ネクタイとスカーフ使い。結ばずに首に添わせてタラッと下げておくのがポイントです。「首回りを制する人はトレンドを制す」という今春からの流れは、まだまだ続く模様。冬場の首回りはマフラーやニットでしたが、夏からは「結ばないタイ&スカーフ」のスタイリングに。
今回、何よりグッときたのは「着たいものを着る」姿と、それが受け入れられている土壌。街で赤いドレスのおひげのムッシュに遭遇した時は、ある意味感動すら覚えました。あるがままの自分を愛し、好きな服を着る。そこには性差を超えて、「人」としての自然体の美しさがあります。
ファッションの魅力は、「自分らしさ」を表現できること。価値観や考えの違う誰かとの出会いは、自分の器(=見識)を広げるチャンス。ダイバーシティとは自分以外の価値観を認め、たたえ合えることだと、再認識しました。それでは、また次回お会いしましょう!(ストリートスタイルフォトグラファー、写真も)
【シトウ・レイ】 石川県生まれ。早稲田大卒。雑誌で活動し始め、日本を代表するストリートスタイルフォトグラファーに。メディアで幅広く活動する他、ユーチューブで最新のファッション事情をリポートしている。