第1回栃木国際映画祭が9月13~15日の3日間、大田原市内で開催された。国際短編映画コンペティションや国内外で活躍する監督らの計53作品が上映され、県内外から延べ約900人が会場に足を運んだという。この新たな試みが映画文化に触れる新たな場となるほか、地域活性化へ定着することを期待したい。
市出身で在住の映画監督渡辺紘文(わたなべひろぶみ)さん(42)や弟で映画音楽家の雄司(ゆうじ)さん(40)らによる実行委員会が主催した。「映画館がなくなった街にもう一度映画の灯を」との渡辺監督の思いから企画され、公募で集まった約50人の実行委メンバーが準備を進め、実現した。
期間中は多くの映画関係者も会場を訪れ、映画祭を盛り上げた。数々のヒット作で知られる堤幸彦(つつみゆきひこ)監督らが登壇し、観客の質問に答えるなどして交流した。渡辺監督が「質問の手が次々と挙がった。映画祭の醍醐味(だいごみ)が出た」と振り返るように、作り手の声を直接聞ける機会は有意義で貴重と言える。
上映前には、子どもたちが手がけた動画も流した。鑑賞マナーの注意を喚起するもので、映画作りを学ぶワークショップに参加した市内外の小学生ら13人が取り組んだ。子どもたちにとってまたとない体験で、映画祭とともに継続してほしい。
父親が映画好きで、その影響を受けたという渡辺監督。学生時代に上京し、より身近に映画館のある生活となって、それが今につながっている。映画には監督、俳優、カメラマン、脚本家など多くが携わる。今回のワークショップには「子どもたちが興味を持つきっかけになれば」との願いを込める。
映画祭の柱の一つになったコンペの国際短編映画部門には、20カ国以上から146本の応募があった。米国の映画評論家らが審査員を務め、グランプリや観客賞のほか、脚本や音楽、撮影など幅広い個人賞を贈った。若手監督らの応募も目立ち、才能の発掘の場としても注目される。
国内外の映画人や観客が一層集まるようになれば、地域振興の有効な取り組みになり得るだろう。ただ地方のイベントには予算のほか、交通手段や宿泊先などの課題が付きまとう。他の民間団体などとの連携や協力も模索しながら、ぜひ映画祭を開催し続けてほしい。