【日光】多くの市民に親しまれた建物が、惜しまれながら約100年の歴史に幕を下ろす。1928年(昭和3)に完成し、ほぼ当時の佇(たたず)まいで現存する今市小の講堂が今月下旬、老朽化に伴って解体される。「今小のシンボル」「俺の剣道の原点だ」「楽しい思い出をありがとう」。講堂前には卒業生らが感謝の言葉などを寄せた横断幕も掲げられている。
木造平屋の講堂は間口約14・5メートル、奥行き約32・7メートル。昭和天皇の即位を記念して建てられ、市内小中学校の施設としては最古の建物という。市今市文化会館が77年に開館するまでは市の各種行事や成人式でも使われた。演劇鑑賞や部活動が行われ、入学式や卒業式で人生の節目を祝った子どもたちも多い。
同校の星野美穂(ほしのみほ)校長(58)もその一人。卒業生で「木のぬくもりを感じる度に当時の記憶がよみがえる」と振り返る。柱の腐食などで2023年に立ち入りが制限され、なじみの薄い在校生もいるだけに、今月18日の終業式では自身の思い出などを紹介するつもりだ。
24年10月に解体を周知すると、交流サイト(SNS)などで拡散し、在学時の記憶をつづった手紙も学校に届いた。これらの思いを共有し、講堂の歴史を在校生にも知ってもらおうと同校PTAは、ビニール製の横断幕(縦90センチ×横180センチ)を設置。メッセージを書き込めるようにした。
渡辺裕介(わたなべゆうすけ)PTA会長(48)は「大勢が悲しみと感謝の思いを抱いている。気持ちに折り合いをつけ、世代の垣根を超えて心でつながる機会になれば」と願う。横断幕は10月の運動会まで設置予定。講堂跡地は駐車場として整備される。