テーブルの上には新聞や雑誌などが無造作に置かれている。少しでも参考になればと誰かが持ち込んだものだった。奨吾(しょうご)はそのうちの一紙、高知のローカル新聞を手にとった。無意識のまま、ペラペラと捲(めく)ってみる。二日前のものだった。そしてその記事が目に飛び込んできた。『高知市内のバスケットボールチーム、プロリーグ入りを断念』というタイトルで、内容は次の通りだった。
『高知市内に拠点を置くバスケットボールチーム〈高知クロシオンズ〉は来年のB3リーグへの参加を目指して、日夜練習を重ねてきた。ところが親会社〈株式会社コネクトエネルギー〉の経営悪化により、この度活動を休止することが発表された。クロシオンズの代表である菊池直輝(きくちなおき)氏は「致し方ないが、高知県のバスケの灯を消さぬよう、頑張っていきたい」と語っている』
写真もなく、見逃してしまいそうな小さな記事だ。コネクトエネルギーという社名には聞き憶(おぼ)えがあった。四国全土で展開している太陽光エネルギーの設置業者であり、そこに投資した東京都在住の男性が詐欺で同社を告発したというニュースが流れたのは今年の春のことだった。ほかにも詐欺に遭ったとされる被害者が続出し、集団訴訟になる騒ぎにまで発展した。親会社が詐欺容疑で告発されたとあっては、資金援助を受けていたバスケチームも無傷ではいられないというわけだ。
最後まで新聞を捲り終えた奨吾だったが、ふと引っかかりを覚えて途中の記事に戻った。活動休止してしまったバスケチーム。その記事が頭から離れなかった。空想めいた思いつきが徐々に大きくなってくる。
「赤羽さん、どうします? 今日はもう解散でえいですか?」
メンバーの声を遮り、奨吾はその記事を指でトントンと叩(たた)いて言った。
「バスケチーム、作らないか?」