自転車走行中の「ながらスマホ」や「酒気帯び運転」に罰則を新設した改正道交法が1日施行された。これまでは都道府県の公安委員会が「運転者の遵守(じゅんしゅ)事項」を定め、違反として対応してきたが、統一の禁止行為として法律で罰則を設けた。利用者は法令順守の意識を徹底すべきだ。

 ながら運転は、走行中にスマホなどを手に持って通話したり、画面を注視したりする行為。酒気帯び運転は呼気のアルコールが0・15ミリグラム以上含まれている状態での運転を指す。法改正の背景には、こうした状態での運転による事故が多いことが挙げられる。

 警察庁によると、2023年の自転車が第1当事者となった死亡事故で、スマートフォンなどを使用しながら走行した場合はそうでない場合に比べ、事故率は約3・8倍高くなっている。

 県警交通企画課は、ながらスマホや酒気帯び運転はともに「前を見ていない、ハンドル操作が不正確など同じ危険性がある」と指摘する。人身事故のうち、自転車が関係する事故は実に4分の1を占め、このうち自転車の7割が何らかの法令違反を犯している。自転車への罰則強化は、交通事故抑止のために「欠かせないアプローチ」という。

 県警は23年9月に「自転車等対策専従班」を発足させ、今年4月から交通部内の各課に専門の係を設けた。改正道交法施行以降、5日現在で29件を摘発。酒気帯び運転は6件で、うち1件はアルコール検知を拒んだとして道交法違反容疑で現行犯逮捕した。ながらスマホは2件あった。

 全国的には、改正法施行を認識していなかったために起きたとみられる逮捕事案もあった。法に基づく取り締まりの強化は当然だが、摘発の多さの背景の一つに周知不足もあるのではないか。警察をはじめ行政機関などは一層の啓発活動を推進すべきだ。

 自転車の酒気帯び運転による摘発を受けた場合、自動車運転免許の停止処分を受ける可能性があることは意外と知られていない。自転車の走行で危険を冒す人は、自動車を運転する場合にも同様の可能性がある「危険性帯有者」と見なす場合の措置である。心すべきだろう。

 法改正の趣旨は、自転車も自動車の運転者とほぼ同等の責務を負うという点にある。その自覚が、自転車の利用者には欠かせない。